皮膚

ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)

昨日は当日券完売済で入場できず、関連書籍だけ買ってとぼとぼと引き上げたリヒター展、やはり大きさやマティエールなどを確かめるためにも実物を見ておきたいと思い、再び竹橋に。結論から言うと、やはり実際の展示を見られて本当によかった。見逃した人は…

【メモ】 享楽社会論: 現代ラカン派の展開 作者:松本 卓也 人文書院 Amazon 松本卓也『享楽社会論』から。 ラカン派の精神分析家、ジャック=アラン・ミレールは、「普通精神病」という新たな用語を提唱するに際して、興味深いことを言っている。前提としてミ…

羊皮紙に尖筆で記すこと/消すこと

動物の皮膚のような物質の表面に徴をつけるときの、野蛮とは言わぬまでも激しい行為について、私たちは心に留めておくべきである。人は先のとがった器具を用いて何らかの方法で動物の皮膚に穴を開け、凸凹にし、「傷つけ」なければならない。書き込んだもの…

皮膚と痕跡、というか、写真についての言説。ソンタグの『写真論』からの引用もしくは再引用。写真論作者: スーザン・ソンタグ,近藤耕人出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1979/04メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 53回この商品を含むブログ (64件) を見る…

客体としての男性(homme objet)について

・ジャン=ポール・ゴルチエ、メンズプレタの初コレクション「l'homme objet (Boy Toy)」(1984年)について語る A year later [in 1984], men wear skirts and prance about sporting outfits cut low in the back. "A piece of clothing doesn't have a gen…

・ボードレール『現代生活の画家』(初出1863年)収録のエッセイ「化粧礼讃(Eloge du maquillage)」より ゆえに流行[ルビ:モード]とは、人間の脳髄の中で、自然な生命がそこに積み上げる粗野なもの、地上的なもの、不潔なものすべての上に浮かび残る、理…

ワタリウム美術館で開催中の寺山修司展「ノック」(http://www.watarium.co.jp/exhibition/1307terayama/)へ。寺山というと、今となってはあまりにも「ある種の紋切り型」として消費されてしまっている人物だが、中学生時代の学級新聞から後年の様々な舞台…

ミッシェル・カルージュ『独身者の機械 未来のイヴ、さえも……』高山宏・森永徹訳、ありな書房、1991年。 目次 はじめに 序論:近代神話を探る」 1:偉大な機械愛好家と彼らの機械」 マルセル・デュシャンとフランツ・カフカ 1975年のノート レーモン・ルーセ…

建築の皮膚と衣裳をめぐって

[rakuten:book:12185681:detail]衣裳と建築の共振性を、同時代の建築とファッションの動向から論じた書。ヴァーグナー、ロース、ル・コルビュジエらは当然のように登場する。 一部分(Deep Skin)のみ邦訳が『10+1』のバックナンバーに収録されているらしい…

ファッションの批評誌『fashionista』001号刊行

発売早々(いや、発売以前から)各所で大反響だった、日本初の本格的なファッション批評誌がついに刊行されました!私もTHEATREPRODUCTSについてのcritical essayを寄稿しております。 fashionista公式サイト:http://fashionista-mag.blogspot.com/ fashion…

思考の屑篭

書物としての建築物 ユゴーによる長篇『ノートルダム・ド・パリ』は、建築物の表面に刻まれた文字の描写から始まる。 ◇引用開始 五、六年まえのことだが、この物語の作者がノートル=ダム大聖堂を訪れたとき――いや、さぐりまわったときと言ったほうがいいか…

思考の屑篭――人体廃墟

比較的記憶に新しい例で言うならば、阪神大震災で破壊した都市や、テロにより崩落するワールド・トレード・センターなども、典型的な「瞬時的廃墟」である。しかしこれらの対象は、「記録写真」に収められることはあっても、「美的な表現」に回収されること…

埼玉大学教養学部

ヨーロッパ文化特殊講義第11回:表層との戯れ――鏡・顔・自己イメージの複数化 (リンク先の確認日はすべて2011年7月8日) 0.導入 [映像]森村泰昌《なにものかへのレクイエム:戦場の頂上の芸術(MISHIMA)》2010年。 http://www.youtube.com/watch?v=_4Aj…

梅毒の文学史作者: 寺田光徳出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1999/04/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る糜爛の皮膚、崩落する顔 年齢を重ねて当然朽ち果てていてもいいはずの、けだものめき、白い粉を吹きだした…

岩石の摩滅や肉体の衰耗などに見られるこのような腐蝕は、人間の働きを思い起こさせる。古ぼけた壁に出来るあのしみやかびは――それらは、レオナルドにとっては、ほんのちょっとした断片のなかに認識されるべき或るひとつの世界の「部分」なのだ――われわれに…

人体廃墟

クラッシュ 《ヘア解禁ニューマスター版》 [DVD]出版社/メーカー: 日活発売日: 2007/05/25メディア: DVD購入: 3人 クリック: 134回この商品を含むブログ (43件) を見る「人体廃墟」について考えながらクローネンバーグの『クラッシュ』を観た。96年作にして…

時間・欲望・恐怖―歴史学と感覚の人類学作者: アラン・コルバン,小倉孝誠出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 1993/07/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (1件) を見る時間、家事労働、衛生と性といったものが、19世紀のフランス…

身体の歴史 1 〔16-18世紀 ルネサンスから啓蒙時代まで〕 (身体の歴史(全3巻))作者: ジャック・ジェリス,ニコル・ペルグラン,サラ・F・マシューズ=グリーコ,ラファエル・マンドレシ,ロイ・ポーター,ダニエル・アラス,A・コルバン,J-J・クルティーヌ,G・ヴ…

都市の解剖学

パリの夜―革命下の民衆 (岩波文庫)作者: レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ,植田裕次出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1988/04/18メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (6件) を見る 第31夜 ばらばらにされた死体 […]帰りはサン=マルタン通りから…

西欧近代とエロティシズム

オルガスムの歴史作者: ロベールミュッシャンブレ,Robert Muchembled,山本規雄出版社/メーカー: 作品社発売日: 2006/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 40回この商品を含むブログ (8件) を見るミュッシャンブレは「心性mentalitéの歴史学」畑の歴史家。…

薄いヴェール

薄いヴェールは欲望を掻き立てる。女たちはすべてを拒みつつもすべてを受け入れる。まさしく薄布とは、神々の顕れなのである。というのも、薄布は快楽の源泉であり、快楽の糧なのだから。もっと言えば、薄布は建築芸術の後ろ盾であり、ときには、この芸術の…

考える皮膚 触覚文化論(増補新版)作者: 港千尋出版社/メーカー: 青土社発売日: 2010/03/20メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る初版刊行は1993年。新作と間違えて購入し、途中で違和感を覚えて確認したところ、大分前に書かれた…

18世紀と解剖学

また、人命を救うことは少なかったが、十八世紀の医学的実践には、独創的で立派な部門が一つあった。外科医は、「なぜ」かを知る必要がないという利点をもっていたのだ。彼らは肉体をデカルト的機械として考え、解剖によって肉体の接合部分を研究し、生体を…

『10+1』のサイトにて、バックナンバーがデータベース化されました。筆者名や固有名詞、キーワードでも検索できるシステムです。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/拙論もご収録いただきました。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/backnumber/article/artic…

中世のフォロ・ロマーノ

廃墟論作者: クリストファー・ウッドワード,森夏樹出版社/メーカー: 青土社発売日: 2003/12/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る 古典期のローマが崩壊してから18世紀にいたるまで、フォーラムで見かける建物といえ…

ボディ・クリティシズム―啓蒙時代のアートと医学における見えざるもののイメージ化作者: バーバラ・M.スタフォード,Barbara Maria Stafford,高山宏出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2006/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブ…

彼方 (創元推理文庫)作者: ジョリ=カルル・ユイスマンス,Joris‐Karl Huysmans,田辺貞之助出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1975/03/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (15件) を見る【破傷風のキリスト】(腐爛を極める聖的…

ルルドの群集作者: J.K.ユイスマンス,田辺保出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1994/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る【崩れる皮膚】 年齢を重ねて当然朽ち果てていてもいいはずの、けだものめき、白い粉を吹きだした口…

未来の自分自身に向けた覚え書き

腐爛の華―スヒーダムの聖女リドヴィナ作者: J.K.ユイスマンス,田辺貞之助出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1994/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る【崩れる皮膚】 病気が全身にひろがったのである。潰瘍は依然としてな…

未来の自分自身に向けた覚え書き

大伽藍作者: J.K.ユイスマンス,出口裕弘出版社/メーカー: 光風社出版発売日: 1985/09/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る【色彩】 こうして、画面に横溢するあの高名な青は、玉座の両側にわたってほとんど同一の様式で、階…