2005-01-01から1年間の記事一覧

岡倉天心(日本美術史講義におけるギリシア文明東漸説)や伊東忠太(法隆寺エンタシス説)の「ギリシア幻想」を追っていて面白いのは、むしろ「ギリシア的なもの」の幻視がさかんになった明治20年代を過ぎてからの彼らの進路である。天心は、インド訪問の際…

フェノロサと岡倉[天心]の提示した概念は、空間を時間に置き換える点で効力を発揮した。それは二つの方向に社会を再布置するものだった。それはまず、この列島にある異種混交的な形象を組織し、発展する日本の国家という物語に仕立てること、つぎに、この…

日本美術史における「古代」概念の構築――フェノロサ「奈良ノ諸君ニ告グ」(1888=明治21年6月5日) 奈良の浄教寺で行なわれた演説。ここでフェノロサは、まずローマと奈良とをアナロジーで捉える。かつて美術と宗教の中心であり、そしてその衰亡の後はしばら…

森美術館の「杉本博司 時間の終り」展へ。ホルバインによる肖像画を元にした蝋人形を、さらに写真に写した作品群が面白い。似姿の似姿の似姿は、作り物っぽさと迫真性の間を揺れ動いている。映画館のスクリーンを長時間露光で撮ったシリーズもあった。撮影の…

Architects' Drawings作者: Kendra Schank Smith出版社/メーカー: Routledge発売日: 2005/09メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見るAmazon.co.jpからきたメールに掲載されていた「お薦め」商品。「『生きられた家―…

Ecole normale supérieure - Archives:フランスの高等師範学校(École normale supérieure)のレクチャーがオンラインで公開されている。例えばこちらは、ジャン=リュック・ナンシーによる"Les différences parallèles. Deleuze et Derrida, avec une coda …

ミシェル・レリスとピエール・クロソウスキーにおけるテクストとイメージについての研究発表を聞く。発表者はバタイユ周辺の文学者を研究している方で、分析もレリスにおけるエクリチュールの問題に集中していたが、「エクフラシス」や「情念定型」など、自…

近刊情報

Akira Mizuta Lippit(リピット水田尭) Atomic Light (Shadow Optics), Minneapolis: Minnesota UP.(Amazon.comのページ) 「Avisuality――可視性と破壊力」と題された氏の講演が、とても面白かったので。講演内容は、第二次大戦(原爆投下)後の日本映画に…

面白そうな展覧会情報

Mélancholie: Génie et folie en Occident(グランパレ ナショナルギャラリー〜06年1月16日) 展覧会カタログの内容紹介(こちら)のページに、英語による詳細情報がある。西洋の美術における「メランコリー」の表象を辿ったものらしい。 Hors cadre(同上〜…

一度お会いしてみたいと思っていた方々と実際にお話できる機会が、昨年から立て続けにあって、巡り会いの運命とは不思議なものだと思う。関心の重なる既存領域が多い分、どこに身を置いても些かの居心地の悪さをいつも感じていた身としては、自分なりの場所…

みんな大挙して詰め掛けるといいんだな。

FORM_RAUM_IDEE(東京大学・駒場博物館〜12月9日) 建築模型という情報伝達メディアは面白い。縮尺を施された現実世界に対応する空間に、自足的に完成された世界が閉じ込められている。とりわけ、窓やドアといった開口部から内側を覗くときがいい。 三井家伝…

矢代幸雄

日本における西洋美術史研究の嚆矢、矢代幸雄についてウェブ検索していたところ、こんなサイトをみつけた。(InterCommunicationのバックナンバーをオンライン上で公開したもの。リンク先は1996年発行のNo.15。)こちらのページの高階秀爾氏の発言によると、…

ミュージアムについてであれ、コレクションについてであれ、調べている途中で必ず突き当たるのが、美術を鑑賞することによって内面を鍛錬・教化するという発想がどのようにして生まれてきたのかという問いである。それは単なる「見ることの悦楽」の追究では…

M―と云う西洋絵画蒐集家についてちょっと調べていて、その関係で野上彌生子の『眞知子』を読む。これが意外と面白くて、ついうっかり読み進めてしまう。当時のプチブル階級における西洋文化の受容状況が、音楽・美術・文学から社会思想に至るまで、かなり詳…

眼の神殿―「美術」受容史ノート作者: 北沢憲昭出版社/メーカー: 美術出版社発売日: 1989/09メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (19件) を見る〈日本美術〉誕生 (講談社選書メチエ)作者: 佐藤道信出版社/メーカー: 講談社発売日: 1996/12/10…

キアロスクーロ――ルネサンスとバロックの多色木版画展(国立西洋美術館:〜12月11日) 《ローマの景観》:ピラネージのまなざし展(同上)

読んだ本

エレンディラ (ちくま文庫)作者: ガブリエルガルシア=マルケス,鼓直,木村栄一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1988/12/01メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 61回この商品を含むブログ (146件) を見る原美術館にて、やなぎみわ展の関連で販売されていたも…

プーシキン美術館展(東京都美術館、〜12月18日) 旧制ロシアの実業家モロゾフとシチューキンによる絵画コレクション(そのほとんどがフランス近代絵画)のエッセンスを抽出した展覧会。 写真パネルから伺える当時の展示手法が面白い。モロゾフ、シチューキ…

The Ruins of the Most Beautiful Monuments of Greece (Texts & Documents) Julien-David Le Roy (著), Robin Middleton (序論), David Britt (翻訳) 言語:英語 ペーパーバック: 576 p 出版社: Los Angeles: Getty Center for Education instituteISBN: 08…

Envisioning the Past: Archeology and the Image (New Interventions in Art History) Sam Smiles (編集), Stephanie Moser (編集) 言語:英語 ハードカバー: 246 p 出版社: Malden, Oxford & Victoria: Blackwell Publishing ISBN: 1405111518 刊行:2005/…

伝記作者ビアンコーニについて。

Bianconi, Giovanni Lodovico, Bologna1717-Perugia1781, 医者・科学者・美術史家。 1753年にラファエロの『聖母子』をドレスデン絵画館のために購入する。メングスやピラネージのモノグラフィー、古遺物研究についての研究書を著す。 Elogio storico del Ca…

やなぎみわ「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」展(原美術館〜11月6日) 古くからの伝承や童話の場面を、老女とのキマイラのような身体を持つ少女たち(実際には特殊メイクと仮面を用いている)が演じた、モノクロームの写真と動画の世界。 少女…

絵画史・建築史のみならず、考古学や「科学」、啓蒙思想の中でのピラネージの位置付け。 同時代(18世紀)の「教化のためのイメージ」群(解剖図など)との比較 碑文研究の伝統との接続。 「考古学的復元」という発想の誕生(現状の描写でも未来的な(あるい…

『チャールモント卿への弁明書』タイトルページ第1刷銘文 "NEC MI AVRVM POSCO NEC MI PRETIVM DEDERITIS ENNIVS" ローマ叙事詩の父と称せられるエニウス(Quintus Ennius,239-169? B.C.) がピュロス王(318?-272B.C.)に向けて謳ったという以下の詩文の一節…

ユートピアを巡る思想

ユートピアの系譜―理想の都市とは何か作者: ルイスマンフォード,Lewis Mumford,関裕三郎出版社/メーカー: 新泉社発売日: 2000/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見るプラトンの『国家』から、トマス・モアの『ユー…

ヴァレリーの「人と貝殻」絡みで貝殻の博物絵を探していて見つけたサイト。 カナダのMcGill大学で美術史を専攻するGilles Thibault氏の、博論用メモらしい。 Cabinet de curiosites 「驚異の陳列室」や博物学に関する図版が豊富。内容は概括的・通史的。

最近読んだ本

自分の研究の対象や方向性は、何らアクチュアルなものへの問題意識を持たずとも可能であるし、さらにはメタなきベタの次元でやろうと思えばやれてしまう。(ただ黙々とデータベース作るだけみたいな。)だから最近は焦るあまり、奇妙な選択の読書が多い。カ…