ルルドの群集

ルルドの群集

【崩れる皮膚】

年齢を重ねて当然朽ち果てていてもいいはずの、けだものめき、白い粉を吹きだした口、口、口が、そこにはまだ生きのびていた。癩病が、首の腫瘍――高台からぬっとつき出した感じの――と隣り合わせになっている。黒いヴェールをはねあげ、狼瘡にくずれた死人の顔をさらしている女たちがいる。両眼の位置には、真赤な二つの穴、鼻のかわりに血の滲み出るクローバーのエースの形が見える。かと思うと、顔面を癌におかされて、顔の形が半分になった者がいる。軟口蓋に穴があいたあわれな男は、そこから膿汁が流れ出ないように、飲み物をすするときは、顔をのけぞらせ、鼻をつままねばならない……(75ページ)

だがこの奇跡の中庭には、もっと物凄いものが見られる……それは、クータンスからの巡礼団に連れられてきた農夫で、罰を受けた子供のように、顔を壁に向けて、ひとりぼっちで食事をしていた。そのかれが、パンをもらおうとして振り向いたのだが……おお、何たること。
むかしは口であったらしい、形の定まらぬ、どろどろになった穴から、大きい舌が一枚、だらんと垂れ下がっていた。舌の表皮は、ゴムでも塗りつけたようにぶよぶよの紫色で、死んだ者の舌みたいだったが、内部は生きて、動いているのだった。両方の頬はひげと一しょにずり落ちていたが、それにしても、顎はどこにあったのか。これで、ものを呑みこむことができるのだろうか。それでもかれは、肉をもぐもぐやっていた。人に隠れてこっそりと。なにしろ、得体の知れぬぶよぶよのものがぶらさがった舌は、皮膚のくずれた狼瘡患者すら、ぞっとするほどのものだったのだから。(76ページ)