ピラネージ

朝日新聞夕刊のリレー連載「にじいろの議」に寄稿いたしました。「空想散歩の歴史をたどる:居室から広がる「体験」」と題して、コロナ禍で一気に普及したヴァーチュアルヴィジットから、空想旅行や空想美術館の系譜を辿ります。https://digital.asahi.com/a…

【メモ】フロイト「文化の中の居心地悪さ」新訳 心の生活においては、一度形成されたものは何ひとつ滅びず、すべてが何らかのかたちで保存されており、たとえばその時期にまで届く退行のような機会に恵まれると、ふたたびおもてに現れてくることがある……。こ…

渋谷区立松濤美術館の「終わりの向こうへ:廃墟の美術史」展へ。普段複製で見慣れた廃墟画の実物の筆跡や細部をじっくり検分できたのと、日本の洋画家壇で1930年代に専ら古代ローマ風の廃墟ブームがあったと知れたのが良かった。明治期の古代ギリシア・ロー…

『週間 読書人』紙に武末祐子著『グロテスク・美のイメージ:ドムス・アウレア、ピラネージからフロベールまで』(春風社、2018年)の書評を寄稿いたしました。ウェブ上でもお読みいただけます。 http://dokushojin.com/article.html?i=3296

文字の図像性

美術論集―アルチンボルドからポップ・アートまで作者: ロラン・バルト,沢崎浩平出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1986/07/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (19件) を見る capital(大文字/柱頭)としての、Type(活字/…

1月10日に開催されたUTCPワークショップ「ピラネージの建築空間を遊歩する:『幻想の牢獄』3D映像化の試み」のブログ報告をアップしました。 http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2012/01/post-507/

UTCPワークショップのお知らせ 「ピラネージの建築空間を遊歩する――『幻想の牢獄』3D映像化の試み」 2012年1月10日(火)17:30–19:00 東京大学駒場キャンパス、18号館1階、メディア・ラボ2 (キャンパスマップ:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_…

18世紀と解剖学

また、人命を救うことは少なかったが、十八世紀の医学的実践には、独創的で立派な部門が一つあった。外科医は、「なぜ」かを知る必要がないという利点をもっていたのだ。彼らは肉体をデカルト的機械として考え、解剖によって肉体の接合部分を研究し、生体を…

『10+1』のサイトにて、バックナンバーがデータベース化されました。筆者名や固有名詞、キーワードでも検索できるシステムです。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/拙論もご収録いただきました。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/backnumber/article/artic…

中世のフォロ・ロマーノ

廃墟論作者: クリストファー・ウッドワード,森夏樹出版社/メーカー: 青土社発売日: 2003/12/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る 古典期のローマが崩壊してから18世紀にいたるまで、フォーラムで見かける建物といえ…

ニュートン主義とピラネージ

B.M. Stafford, "Bare versus Prismatic Style : Newton, Piranesi and eighteenth-Century Theories of Abstraction in Art and Science", F. Burwick & J. Klein eds., The Romantic Imagination : Literature and Art in England and Germany, Amsterdam …

建築に関する所感(思考の断片)

この版画家がこだわり続けたのは、機能に還元されることのない、「物質」の側面なのではないだろうか。『建築に関する所感』や『暖炉の様々な装飾法』に顕著な装飾への固執も、その現れであるように思われる。このような「即物性」もまた、ピラネージの眼差…

esplorazione/esplosione タフーリ『球と迷宮』の誤訳?

球と迷宮―ピラネージからアヴァンギャルドへ (PARCO PICTURE BACKS)作者: マンフレッドタフーリ,Manfredo Tafuri,八束はじめ,鵜沢隆,石田寿一出版社/メーカー: PARCO出版発売日: 1992/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (10件…

un'architettura infetta

ピラネージの『建築に関する所感』に出てくる表現、「le piaghe di un'architettura infetta nella radice」。infettaが当時もっていたニュアンスを調べたくて、ひとまず大学図書館の開架にあった『Dizionario Etimologico Italiano』を紐解いてみた。 infet…

ingenium : nature; (disposition) bent, character; (intellect) ability, talent, genius; (person) genius (Collin Gem, Latin English, English Latin Dictionary) ジャンバッティスタ・ヴィーコによれば、インゲニウムとは離れた場所に在る諸事物を、適…

Henri FocillonのGiovanni Battista Piranesi 1720-1778 : essai de catalogue raisonné de son oeuvre (Paris : Libr. Renouard, H. Laurens, 1918)、リプリント版が2001年にも出ている(http://www.amazon.fr/dp/2884745041/)。日本ではむしろ『形の生…

Egyptomania

Jean Viel de Saint-Maux:解読すべき謎としてのヒエログリフと「ヘルメスの石」としての建築。 c.f. Anthony Vidler, The writing of the Wall, N.Y.:Princeton Architectural Press, 1987, pp.139-146.(Symbolic Architecture, Viel de Saint-Maux and the…

考古学と「死者に名前を返すこと」

キケロの伝える記憶術の創始者シモニデス(BC557頃-467頃)にまつわる挿話。ある祝宴に招かれたシモニデスは、辛くも災厄による邸宅崩壊を免れ、一命を取り留める。遺族たちに請われて、彼は祝宴の客たちの席順を想起し、死者たちの身元確定に貢献する。 死…

ジウゼッペ・ヴァラディエール

ほどなくピラネージは、自分よりも遥かに若いローマの建築家、ジュゼッペ・ヴァラディエルの中に、ひとりの追随者を見いだした。ヴァラディエルの建物の数々と1790年頃に描かれた数多くの図版は、彼もまた、各要素の何らかの新しい秩序をなし遂げようと望ん…

教皇クレメンス13世

最盛期のピラネージのパトロンだったのが、同郷人(ヴェネツィア出身)の教皇クレメンス13世(在位1758-1769)である。クレメンス13世の時代は、ヨーロッパ各国(スペイン、ポルトガル、両シチリア王国、ナポリ王国)でイエズス会士追放の動きが強まり、また…

ローマのヴィッラ・ハドリアーナについて

このヴィッラはハドリアヌス帝が拡張した大ローマ帝国の各地を長期に訪れたときにみた建築の記憶をもとに組み立てたといわれている。いわば「うつし」がつくられた。建築の形式のみならず、ここに配されていた無数の彫像も、多くはギリシアの傑作をそのまま…

l'archivistique(アーカイヴス学、とでも訳せばいいのだろうか。archive(s)の語は、英語でも仏語でも通常複数形で用いられる。)の授業で、今度発表しなくてはならず、四苦八苦しているところ。 自分の専門分野に関する「アーカイヴス」の現状や性質・特徴…

18世紀の「崇高」概念との関連について(メモ)

ここでも取り上げられている『牢獄』は、同時代にも後代においても言及されることの多い作品だけれど、実はピラネージの仕事の中ではやや特殊な部類なのではないかと思っている。作品に内在する性質というよりは、その特殊な受容のされ方が。

空所恐怖症(Fear of voids or empty spaces)はKenophobia。 今までずっと「空所恐怖症」の意味で「空間恐怖症」という言葉を使ってきたのだが、インターネット上で調べたところ、精神医学用語としての「空間恐怖(spacephobia)」とは、広場恐怖(agoraphb…

リサーチアシスタントを務めさせていただいた東京大学21世紀COE「共生のための国際哲学交流センター(UTCP)」の論集が刊行されました。第9号「言葉とイメージ」に、私も拙論「不可視の過去を可視化すること」(42-58ページ)を寄稿しています。決して会心の…

ヴィンケルマンが「端緒」とされるギリシア熱の背景について。 ヴィンケルマンが「ギリシア人の精神」を推奨したことは、その当時としては珍しいことだった。最後に彼が住んだローマは、ローマ・カトリックの中世とルネサンスを通じてヨーロッパ文明の起源で…

フランスのピラネージ関連の研究者 Baldine Saint-Girons(パリ第10大学) プロフィールのページ:http://www.u-paris10.fr/67236095/0/fiche_E__pagelibre/ 18世紀の美学思想(特に崇高論)、ならびに同時代の芸術的・思弁的実践(絵画・建築・造園術・風景…

アマゾンで検索して出てきた、まだ持っていないけれど入手しておくべきであろうピラネージ関連書籍 Observations on the Letter of Monsieur Mariette: With Opinions on Architecture, and a Preface to a New Treatise on the Introduction and Progress o…

Lola Kantor-Kazovsky, "Piranesi as Interpreter of Roman Architecure and the Origins of his Intellectual World", Olschki Editore, 2006. 先行研究や、現在明らかになっている事実など、精緻かつ整然とまとめられている。

・ギリシア派の建築理論家・イエズス会士、マルク・アントワーヌ・ロージェ(Marc-Antoine Laugier, 1713-1769)の著作『建築試論(Essai sur l'architecture)』(1755)より。この著作の「原始の小屋(田野の小屋)」という扉絵は、ギリシア派たちの思想を体現…