2019-01-01から1年間の記事一覧

ドーピングの哲学: タブー視からの脱却 作者: 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2017/10/31 メディア: 単行本 スポーツと「健康」の両義的関係と身体の近代 いったい競技スポーツはいつから「健康」とたもとを分かってしまったのだろうか。[イザベル・]ク…

テクストと映画の翻訳関係(翻案・アダプテーション) 夢の共有――文学と翻訳と映画のはざまで 作者:野崎 歓 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/11/30 メディア: 単行本 クロス・カッティングのほかにも、移動撮影、俯瞰撮影やクローズアップなど、サイ…

安部公房と都市。1960年代から70年代にかけての、日本における「住宅」をめぐる言説との関係はどうなのだろうか? そういえば『燃えつきた地図』は、一種の「団地小説」でもある。 都市との距離という問題は、1960年代後半から70年代前半においては建築に限…

日本における「建築書」の系譜(work in progress) ・平政隆『愚子見記』全9冊、1683(天和3)年(1669年以前から執筆開始)。法隆寺の工匠(大工棟梁)による技術書。内裏や諸社寺の建物の形状や寸法、建築費の積算、工事仕様なども記す。宮大工の扱う建築…

廃棄の文化誌 新装版―ゴミと資源のあいだ 作者: ケヴィン・リンチ,有岡孝,駒川義隆 出版社/メーカー: 工作舎 発売日: 2008/02/25 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (3件) を見る 廃棄の文化誌―ゴミと資源のあいだ 作者: ケヴ…

秋雨の降る中、上京していた母と共に国立西洋美術館の松方コレクション展へ。松方幸次郎の経営していた川崎造船所の経営破綻に伴う作品の散逸や、ロンドンの保管倉庫の火災による焼失などで、コレクションの全容は不明とされてきたけれども、2016年にロンド…

断章的日記。 灰白色の懶惰を眠る。気に入りの、というよりも分離不安から手放せなくなってしまった獏のぬいぐるみを抱えて眠る。寝室には高い場所に小さな窓が一つあるだけで、昼間もいつも薄暗く、浅瀬のような眠りのなかに浮かぶには都合がよい。もちろん…

国立新美術館の「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」展内覧会へ。https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/gendai2019/ 邦題にある「文学」より、英題「Image Narratives」の「ナラティヴ」、あるいは子供向けミニガイドにある「物語」という語の…

とある必要があって、というと勿体ぶった感じだが、「1980年代の日本のサブカルチャーに現れた「遺棄された場所(abandoned places)」のイメージ」というテーマで論文を書くうえでの資料として、1980年代の東京グランギニョルの戯曲を読んでいる(『マーキ…

六本木でほぼ同時期に開催されている、「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」展(国立新美術館)と、「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館)へ。 クリスチャン・ボルタンスキーは、初期の「クリスチャン・Cの衣服」や「モニュメント」シリーズ、の、…

ファッションと哲学 16人の思想家から学ぶファッション論入門 作者: アニェス・ロカモラ,アネケ・スメリク,蘆田裕史,安齋詩歩子,大久保美紀,小林嶺,西條玲奈,関根麻里恵,原山都和丹,平芳裕子,藤嶋陽子,山内朋樹 出版社/メーカー: フィルムアート社 発売日: 2…

活人画の時間:テクスト、映画、写真

勅使河原宏の世界 DVDコレクション 出版社/メーカー: 角川映画 発売日: 2002/04/14 メディア: DVD 購入: 2人 クリック: 40回 この商品を含むブログ (45件) を見る 箱男 (新潮文庫) 作者: 安部公房 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/05 メディア: 文庫 …

死者の固有名について 人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ。死においてただ数であるとき、それは絶望そのものである。 (石原吉郎『望郷と海』ちくま学芸文庫、Kindle 版、2002年、No. 38。) いわば一個の符号にすぎな…

出張報告より 6月8日(土)9:00〜:自宅最寄り駅より出発、13:00過ぎに最初の目的地である京都大学総合博物館に到着。13:00〜15:00:「タイムライン:時間に触れるためのいくつかの方法」展を見学、たまたま開催中であった展覧会関連のシンポジウムの一部(…

遺棄された場所について 机周りの片付け中、書棚に戻そうとしてふと中を開いたところ、「abandoned places」論の参考になりそうな章を見つけた。「「空隙都市」東京」と題されたこの論考(初出『JA』1992年)では、経済成長の結果として東京に生まれた特異な…

ゴールデン・ウィークもそろそろ終わりが見え始めた頃、アーツ千代田で開催中のシド・ミード展に行ってきた。https://sydmead.skyfall.me そのうち(いつ?)書こうと思っているのが、日本の1980年代サブカルチャーにおける廃墟モティーフの話なので、映画『…

アラン・レネ『去年マリエンバードで』を観る。冒頭のナレーションとカメラワークからして、圧倒的な「建築映画」だ。壁面を伝うロカイユ模様や格間の装飾のクロースアップ、たびたび映し出される庭園の透視図、鏡の間、そして整形庭園。ドラマを繰り広げる…

土曜日の夕方、仕事はちょっと脇に置いて、国立西洋美術館の「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ ピュリスムの時代」展へ。ジャンヌレがル・コルビュジエになるまで(1910年代〜30年代初頭)の、オザンファンとの協働関係からキュビスムの影響を経て、初期の…

拙論「世界解釈、世界構築としての建築の図的表現:J. -N. -L.デュランの『比較建築図集』と『建築講義要録』から」がリポジトリ公開されました。2017年と2018年の表象文化論学会大会での口頭発表を加筆修正したものです。 permalink:http://doi.org/10.189…

遺棄された場所についての覚書 動いている庭 作者: ジル・クレマン,山内朋樹 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2015/02/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 荒れ地の語源についての見解は共通している。1872年刊行の『19世紀世界大辞典』に…

J.-N.-L. デュランについての紀要論文のために、昨年8月にTweetしたメモを再掲。 テラン・ヴァーグ概念で有名なイグナシ・デ・ソラ=モラレス、J.N.L. デュランについての論文も書いていた☞https://www.jstor.org/stable/1567112 理性主義(ポリテク)と折衷…

渋谷区立松濤美術館の「終わりの向こうへ:廃墟の美術史」展へ。普段複製で見慣れた廃墟画の実物の筆跡や細部をじっくり検分できたのと、日本の洋画家壇で1930年代に専ら古代ローマ風の廃墟ブームがあったと知れたのが良かった。明治期の古代ギリシア・ロー…

東京都写真美術館の「建築×写真 ここのみに在る光」展へ。収蔵品から構成した企画展とのことだが、写真が捉えた建築、写真のみが捉えうる建築について思考を促す、佳作の展示であった。 冒頭に展示されているダゲレオタイプが鏡面のように反射することに驚く…

2019年元日 新年のご挨拶昨年は勤務先の大学でも、所属している表象文化論学会でも責任のある仕事や役割を任され、その間隙を縫ってレジスタンス活動のように研究をする日々だった。しかし、新しい場所での面白い試みに呼んでいただく機会も増え、知的な刺激…