起源と古代をめぐる言説

直前の告知になってしまいましたが、勤務先の学内学会で以下の発表を行います。 和洋女子大学日本文学文化学会 研究発表 小澤京子「近代日本の絵画 文学 国家観におけるギリシア・イメージ」 日時:2015年6月30日(火) 13:00〜(12:30〜開場) 会場:和洋女…

本日は、白井秀和氏のルドゥ註釈で言及されていたJames Stevens Curlの著『The Egyptian Revival』を検分。 要は、ルドゥの(その奇矯さで有名な)建築図「ブザンソンの劇場への一瞥」が、アルベルティの肖像コイン(15世紀半ば制作)裏面に彫られた「翼を持…

ディディ=ユベルマンが立脚するベンヤミンの歴史観パサージュ論 第3巻 (岩波現代文庫)作者: W・ベンヤミン,今村仁司,三島憲一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2003/08/20メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (15件) を見るヴァルター・ベン…

集合的記憶作者: M.アルヴァックス出版社/メーカー: 行路社発売日: 1999/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (14件) を見る 序文――モーリス・アルヴァックス 第1章 集合的記憶と個人的記憶 対照/集団からの離脱による忘却/感…

モーリス・エマニュエル『人物像に基づく古代ギリシアの舞踏(La danse grecque antique d'après les monuments figurés)』1896年。 この書は、ダンカンやバレエ・リュスに代表される、舞踏におけるグリーク・リヴァイヴァルの嚆矢となった。古代ギリシア美術…

政治の美学―権力と表象作者: 田中純出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2008/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 44回この商品を含むブログ (26件) を見る・ムッソリーニ政権下のプロパガンダとして、「イタリア的」な「国民的英雄」の称揚が進…

パリ滞在時にBnFで見つけた一冊。ルネサンス期の古代美術発掘と、そこから「過去」を再構成する作業について。彫像、すなわち人間の身体表象が中心的に扱われている。 Leonard Barkan, Unearthing the Past: Archaeology and Aesthetics in the Making of Re…

考古学の歴史:事物から学へ

Histoires d’archéologie : de l’objet à l’étude INHA(フランス国立美術史研究所)で4月12日まで開催中のエキシビション。

ゲルマニア幻想

アメリカで2006年に放映されたというドキュメンタリー「Lost Worlds: Hitler's Supercity」をキャプチャーした動画を、YouTubeで発見。ヒトラーによるメガロマニアックな都市構想を追った企画である。ヒトラーとアルベルト・シュペーアの恊働による都市計画…

prêt inter-bで頼んでいたアンソニー・ヴィドラー論文のコピーが、漸く届いた。 Anthony Vidler, "The Idea of Type : The Transformation of the Academic Ideal, 1750-1830", in Oppositions / Institute for Architecture and Urban Studies, 1977(spring…

思考の屑篭

建築の起源について 建築の根源ないし原理を、ヴィドラーは「ソロモンの神殿」と「アダムの家」の二項に大別している。すなわち、神の力による建造物という象徴的・フリーメイソン的な発想と、自然の力に基づく原始の小屋という唯物論的な思考の二種である。…

un'architettura infetta

ピラネージの『建築に関する所感』に出てくる表現、「le piaghe di un'architettura infetta nella radice」。infettaが当時もっていたニュアンスを調べたくて、ひとまず大学図書館の開架にあった『Dizionario Etimologico Italiano』を紐解いてみた。 infet…

Egyptomania

Jean Viel de Saint-Maux:解読すべき謎としてのヒエログリフと「ヘルメスの石」としての建築。 c.f. Anthony Vidler, The writing of the Wall, N.Y.:Princeton Architectural Press, 1987, pp.139-146.(Symbolic Architecture, Viel de Saint-Maux and the…

Daniel Payot, Le philosophe et l'architecte : sur quelques déterminations phiilosophiques de l'idée d'architecture, Paris: Aubier Montaigne, 1982. http://www.amazon.fr/dp/2700702905/ Introduction Première partie : L'architecture, le commen…

考古学と「死者に名前を返すこと」

キケロの伝える記憶術の創始者シモニデス(BC557頃-467頃)にまつわる挿話。ある祝宴に招かれたシモニデスは、辛くも災厄による邸宅崩壊を免れ、一命を取り留める。遺族たちに請われて、彼は祝宴の客たちの席順を想起し、死者たちの身元確定に貢献する。 死…

過去の征服

Alain Schnapp, La Conquête du passé: aux origines de l'archéologie, paris: Éditions Carré, 1993. 副題は「考古学の(複数の)起源」。17世紀の古遺物研究家(Antiquaire:シュナップの定義では「古遺物研究」の発祥はルネサンスではなく17世紀である)…

楽園のアダムの家

建築のアーキタイプなる概念を通史的に扱った書籍として名高い、ジョセフ・リクワートの『アダムの家――建築の原型とその展開』(黒石いずみ訳、SDライブラリー、1995年)。英文オリジナル版(Joseph Rykwert, On Adam's House in Paradise, The Idea of the …

始まりと復古

André Lacocque & Paul Ricoeur, Penser la Bible, Paris: Seuil, 1998. http://www.amazon.fr/dp/2020316773/ この論集に収められているリクールの論考「Penser la Création」は、聖書や神学というテーマを離れて、「起源l'origine」とその「連続性continui…

探し物と漂流物

World Catという文献検索システムを、初めて使ってみた。 http://www.worldcat.org/ 探していたのは、Rosaline Bacou et al., Le cabinet d’un grand amateur P.J. Mariette 1694-1774. Dessins du XVe siècle au XVIII siècle, Paris : Musée du Louvre, Ga…

L'invenzione dei Fori Imperiali, Musei Capitolini (Roma)

8月2日、ローマ旅行の最終日に訪れたカピトリーニ美術館では、「L'invenzione dei Fori Imperiali, demolizioni e scavi : 1924-1940(フォリ・インペリアーリの発明、破壊と発掘:1924年〜1940年)」と題された企画展が開催されていた。考古学や古代の「再…

ローマ帝国再興

ナチス・ドイツの「第三帝国」は有名だが、そもそもムッソリーニも「ローマ帝国の再興」を掲げてファシスト政権樹立・帝国主義的侵攻を行っている。この辺りを攫ったら、別の視点からのヒントが見えてくるかも。

廃墟のReminiscence

ふと頭の片隅に島崎藤村の「千曲川旅情の歌」の一節が浮かんできて、残りの部分が気になったので調べてみた。 「千曲川旅情の歌」 昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにをあくせく 明日をのみ思ひわづらふいくたびか栄枯の夢の 消え…

考古学と郷土愛

18世紀に勃興したエトルリア考古学ブームの根底には、ローマ中心主義への反発と、イタリア人考古学者たちの「郷土愛」とがあった。 Thomas Dempester made a hit because the Italian scholars were looking for a new focus for their patriotic feelings a…

約3ヶ月前の日記に書いたDictionnaire portatif des Beaux-arts(改訂版1759年、L.M.+++. Avocatの名の下に刊行された初版は1752年)を、公立図書館で漸く閲覧する。その「完璧な自然(Nature parfaite)」の項では、完璧な自然模倣を実現するためには、つま…

Egyptomania

最近オンラインニュースで知って、妙に興味を惹かれてしまったのが、青森県戸来村に伝わる諸伝説。村内の円形墳墓が、ゴルゴダでの磔刑を免れ日本へと渡来してきたイエス・キリストの墓であるだの、ピラミッドが存在するだの、ヘブライ語・ユダヤ文化圏に属…

「性格(カラクテール)」概念と分類学

Jacques François Blondel, Cours d'architecture, 6 vols, 1771-77. これはディジョンの市立図書館所蔵のもの。同じ著者によるDiscours sur la nécessité de l'étude de l'architectureやArchitecture françoiseは日本の大学図書館にも所蔵があるようだけれ…

原始の神殿の再建

例えばスフロ(パンテオンの建築家)も「芸術と建築の起源を表す神殿」を目指したのに、到達地点がピラネージなどとは全く別のところにあるのは何故か?「完璧な自然」としての古代。模倣すべきは、眼前の個別具体的な主体ではなく、瑕瑾なき「あるべき姿」…

パリにあるモンソー公園の、疑似廃墟群とルドゥーによるロトンダ。三宅理一氏の『エピキュリアンたちの首都』には、この庭園デザインとフリーメイソン思想との関連について記述がある。エピキュリアンたちの首都作者: 三宅理一出版社/メーカー: 學藝書林発売…

l'archivistique(アーカイヴス学、とでも訳せばいいのだろうか。archive(s)の語は、英語でも仏語でも通常複数形で用いられる。)の授業で、今度発表しなくてはならず、四苦八苦しているところ。 自分の専門分野に関する「アーカイヴス」の現状や性質・特徴…

Annie-France Laurens, Krzysztof Pomian et al., L'anticomanie: La collection d'antiquités aux XVIIIe et XIXe siècles, Paris: Editions de l'EHESS, 1992. http://www.amazon.fr/Lanticomanie-collection-dantiquit%C3%A9s-XVIIIe-si%C3%A8cles/dp/271…