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- ingenium : nature; (disposition) bent, character; (intellect) ability, talent, genius; (person) genius
(Collin Gem, Latin English, English Latin Dictionary)
ジャンバッティスタ・ヴィーコによれば、インゲニウムとは離れた場所に在る諸事物を、適切なメディウムによって結合させる知性の働きのこと。ヴィーコと同じ18世紀人であるピラネージやカナレットによる「モンタージュ」も、この「インゲニウム」の体現として論じることができてしまいそうである。作品の本質を、「インゲニウム」や「崇高」(エドモンド・バーク)といった同時代概念に単純に還元してしまうのは、それ以上の何かに繋がるような、生産的な議論だとは余り思えないのだけれど……ちなみにピラネージは、故郷ヴェネツィアで建築修業をしていた時期に、当時のヴェネツィアの建築界を支配していたカルロ・ロードリの理論を通して、ヴィーコ(主に「ローマ文明の祖としてのエトルリア人」という発想)の影響も受けていたようだ。もちろんピラネージの作品(とくに《古代アッピア街道》や《イクノグラフィア》、『暖炉の様々な装飾法』の諸図版など、異種混淆的なモンタージュ作品)に、ヴィーコ的インゲニウムの反映を見出すことは容易いのだけれど、それだけの議論ではピラネージの「想像力」を矮小化してしまうように思う。ピラネージは「自律した諸部分」(エミール・カウフマン)を寄せ集めて、ひとつのヘテロトピア的空間を創り出したが、このコラージュを繋ぎ合わせる「接着剤」の役割を果たしていたのが、18世紀美学理論の用語でいう「想像力」や「奇想」なのではないだろうか。