都市と建築のイメージ

パノララ作者: 柴崎友香出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/01/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る本日の愉楽読書は柴崎友香『パノララ』(講談社、2015年)だった。異質なものを継ぎ接ぎしたレブリカブラックな空間というモティーフが…

永井荷風の東京逍遥

荷風は、大正に入りますます急速に失われゆくようになった「江戸的なもの」の面影と残存を、現在の東京の無目的な散策を通して見出そうとする。そして荷風の散策は、彼が18世紀初頭のパリの新聞記者アンドレエ・アレエの例を出して言うような、主体的・積極…

近代都市、群衆、遊歩、ボードレール

ボードレール批評〈2〉美術批評2・音楽批評 (ちくま学芸文庫)作者: シャルルボードレール,Charles Baudelaire,阿部良雄出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1999/03メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るボードレールはエドガー・ア…

萩原朔太郎『青猫』に差し挟まれた、何処ともつかない、しかし明白に西洋風な風景画の由来について。(2017年7月1-2日開催の表象文化論学会第12回大会での熊谷謙介氏の発表「「青猫・以後」と郷愁――「のすたるぢや」の歴史性」(パネル「萩原朔太郎の表象空…

しとやかな獣 [DVD]出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2012/11/16メディア: DVD クリック: 5回この商品を含むブログ (10件) を見るとある自主研究会で他メンバーが行う発表の予習として、川島雄三監督『しとやかな獣』1962年(Amazonビデオ:https://www.ama…

関東大震災後の東京における知覚の変容、小村雪岱の場合。「余韻」としての在りし日の面影。 こうした知覚のあり方[=雪岱の文章に表れた、二つの異なる知覚形態の重ね合わせ(パラタクシス)]は記憶の記銘と想起に深く関わっている。二十歳過ぎまで暮らし…

2017年度後期の「都市の事典をつくろう」演習のための資料。ちなみにこの演習は、「私たちの生きる「環境」であり、社会・政治・文化のあり方を反映しつつ形成される「人工物」であり、固有の記憶の場でもある「都市」。その細部における観察と発見の成果を…

ニコラ・ル・カミュ・ド・メジエールについての博士論文(2000年、マギル大学に提出されたもの) Pelletier, Louise, Nicolas Le Camus de Mézières's architecture of expression, and the theatre of desire at the end of the Ancien Régime, or, the ana…

都市の記憶

犬の記憶 (河出文庫)作者: 森山大道出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2001/05/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 23回この商品を含むブログ (56件) を見る 人間が持っているように、街も夢や記憶を持っている。人間の記憶がさまざまな混成系であるよ…

イベントのご案内

建築の記念性をめぐる、下記のイベントに参加いたします。 ぜひご参加ください。 日本建築学会『建築雑誌』2017年7月号特集「建築は記念する」公開対談 鈴木了二×小澤京子「歴史のイマジナリーラインズ」(司会:戸田穣) 【日時】2017年4月21日(金)18:00…

破壊のあとの都市空間: ポスト・カタストロフィーの記憶 (神奈川大学人文学研究叢書)作者: 熊谷謙介,神奈川大学人文学研究所出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2017/03/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る熊谷謙介編『破壊のあとの都市空間…

フーリエの理想都市計画と「換気」

シャルル・フーリエ伝―幻視者とその世界作者: ジョナサンビーチャー,Jonathan Beecher,福島知己出版社/メーカー: 作品社発売日: 2001/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (2件) を見るすでに1796年12月のボルドー市当局宛の手…

ルイス・カーン(ルイ・カーン)と「建築のスピリット」の体現としての廃墟

ルイス・カーン建築論集 (SD選書)作者: ルイスカーン,前田忠直出版社/メーカー: 鹿島出版会発売日: 2008/04メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る 沈黙と光について一言。建設中の建物はいまだ苦役を知りません。存在…

メモ:カタストロフィーの表象の(遠くから、安全な場所から眺められるという「距離」の確保)「崇高の美学」への回収

「ビキニ島の原子爆弾爆発の写真を見ていて、ギリシャ神話以来、どんな想像力も達しなかった水量が、空に舞っているのを見たと思わずにはいられない。「目に見えているものが、いっとう神秘である」という言葉は、機械時代には二重の意味をもって、私たちに…

カタストロフィによって破壊される都市と「崇高」の美学

すでに18世紀初頭、イギリスの文筆家ジョゼフ・アディソンは、地震と津波により倒壊したナポリの古代ローマ遺跡の情景に、「古代の栄光の廃墟と、混沌の中にある偉大な壮麗さ*1」を――つまり持続的な時間経過によって出来した遺跡と同様の価値を――見出してい…

サド、リベルタンたちの避難所

さて、サドの強者は弱者たちを、それがなくては彼らが生きてはいきない相互援助の連関から引き離し、多くの場合、人里離れた山奥、孤立した城(「そのすばらしい城は孤立していた isole」)、地下などに幽閉し、自分たちの情欲の満足のための道具と化す。サ…

パリの廃墟作者: ジャックレダ,Jacques R´eda,堀江敏幸出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2001/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (11件) を見る図書館の地下書庫で、偶然背表紙の文字が目に飛び込んできて借りた一冊。1970…

世田谷美術館で開催中(〜4/10)の「ファッション史の愉しみ」展(http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibiti…/exhibition.html)に合わせて制作された読本に、拙論「建築と衣服――装飾をめぐるアンビヴァレンス」を寄稿いたしました。展覧会と併せ、ご高…

テクストの中の都市

都会――閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくり同じ番地がふられた、君だけの地図。 だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ。 (安部公房「燃えつきた地図」、『安部公房全作品』第8巻、新潮社、1972年、6ペー…

テクストの中の都市

都会――閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくり同じ番地がふられた、君だけの地図。 だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ。 (安部公房「燃えつきた地図」、『安部公房全作品』第8巻、新潮社、1972年、6ペー…

五十嵐太郎編『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』(エクスナレッジ)が10月29日に刊行されましたくらべてわかる世界の美しい美術と建築 (エクスナレッジムック)作者: 五十嵐太郎出版社/メーカー: エクスナレッジ発売日: 2015/10/29メディア: ムックこ…

7月11日にユートピア研究会「別館」として、ちょっとした研究発表を東大本郷キャンパスで行います。日時:2015年7月11日(土) 17:30-19:00 発表タイトル:「1980年代の日本における「遺棄された場所」の系譜」 発表者:小澤京子(和洋女子大学) ディスカッ…

イベントのお知らせ

以下のシンポジウムに私も登壇いたします。 ※3月18日追記:会場が変更されました(変更前と同じ建物内です)。下部のポスターも差し替えました。 「建築/非建築の荒野で──廃墟・身体・生のポリティクス」 2015年3月30日(月)18時〜20時30分 東京大学駒場…

Annie Le Brun, Les Châteaux de la subversion, suivi de Soudain un bloc d'abîme, Sade, Paris : Gallimard, 1986. 版元の紹介ページ:http://www.gallimard.fr/Catalogue/GALLIMARD/Tel/Les-chateaux-de-la-subversion-suivi-de-Soudain-un-bloc-d-abime…

立原道造の廃墟論

建築が建築家の理念から製図に移された瞬間から、(或はこれを私たちが緩やかな表現で言はうとするなら、建築がすべての過程のあと出来上がつたものとなつた瞬間から)それはただたえまなくくづれ行くために作られたものとして、崩壊の第一歩を踏むことのあ…

締切仕事2本が未だ終わっていないけれど、よく晴れた冬の日の今日はワタリウム美術館の「磯崎新 12×5=60」展(http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html)、それからトラウマリスで開催中の「片山真理展 You're Mine」(http://traumaris.jp/space/)…

映画理論集成―古典理論から記号学の成立へ作者: 岩本憲児,波多野哲朗出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 1982/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る この新しいメディア[映画]だけに特有のさまざまな可能性…

お知らせ

『ユリイカ』9月号(特集:サド――没後200年・欲望の革命史)に、「サド、建築家」と題した小文を寄稿いたしました。もうじき書店にも並ぶかと思います。ご高覧いただければ幸いです。 目次はこちら:http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791702770なお…

リルケ『マルテの手記』の廃墟描写

マルテの手記 (新潮文庫)作者: リルケ,大山定一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1953/06/12メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (37件) を見る それから、あんな家があるといったら、果たして誰が僕を信じるだろうか。[…]果たして…

黒沢清やデヴィッド・リンチの映画を見ていてふと思ったこと。「映画内空間とカーテン」というのは結構面白いテーマなのではないか。二つの空間の間を区切りつつ、壁ほど堅固でなく窓のように透明でもなく、しかし扉より曖昧で、波打つ柔らかさと運動性があ…