パノララ

パノララ

本日の愉楽読書は柴崎友香『パノララ』(講談社、2015年)だった。異質なものを継ぎ接ぎしたレブリカブラックな空間というモティーフが、時おり円環状にループする時間と併せて、なにか独特で面白い。個人的には「建築空間文学」の系譜に位置づけたい作品。
ワープやループがもつ空間的・時間的性質や、特徴的なブリコラージュ住宅と、パノラマモード写真との共通性について考える。ここでのパノラマとは、19世紀的なモティーフである「パノラマ」のことでは勿論でなく、デジタルカメラスマートフォンのカメラについている、素人向けのあのモードである。作中の言葉を借りれば「別の角度から見た世界をつなぎ合わせた」「少しずつずれて、欠けたり、重なったりしている風景」が現れる。
本作のサブモティーフは「映画」なのだが、パノラマモードによる風景の継ぎ接ぎには、お馴染みの論題「モンタージュ」と、似ているようでいて全く違う性質があって、それこそがこの作品の肝という気がしている。