遺棄された場所についての覚書

動いている庭

動いている庭

 

  荒れ地の語源についての見解は共通している。1872年刊行の『19世紀世界大辞典』には「グリムが「耕作地」に関係づけた俗ラテン語のfriscumに由来。一度は耕したが、「損なわれ」、駄目になってしまった畑を指す。モリはゲール諸語で放棄された耕地を意味するfrithおよびfritheを提案した」とある。また1983年刊の『ル・プティ・ロベール』では「女性名詞、1251年、古フランス語や方言のfrècheのヴァリアント。中世オランダ語で「新しい」を意味するversh」と説明されている。

 荒れ地という語はほとんどの場合、耕されなくなった土地や、耕されなくなるだろう土地に適用される。この言葉は、野生の丘陵地であれ、高山の切り立った草原であれ、エリンギウムでいっぱいの砂丘の後背地であれ、「自然」と名のつく他のどんな環境を指すためにも使われることはない。そうではなくて、荒れ地はそこから自然も農業も締め出してしまって、ここでもっと良いものをつくれると仄めかしているのだ。

(上掲書、23ページ)

 

さらにクレマンは、2000年にフランス建築研究所で開催された展覧会に寄せられたテクストの抜粋を、自らの考えを示すものとして記している。クレマンによれば「放棄地」とは、生物進化のプロセスにおける生物の営みに満ちた時間であり、再生する土地であって、「見捨てられた土地」という側面からは捉えない、というのが彼らのアプローチである。(以下で引用するのは、「放棄地」についての現象記述、事実認定のレベルでの定義であり、クレマン自身がこのような定義に何か可能性を見出している、というわけではない。)最終的に彼は、「休耕地再生林」という語を挙げ、それが「あらゆる放棄地が森を生み出せることを示す包括的な語彙」としている(上掲書、158ページ)。

 

放棄地

・その身分

 「自然」を冠する空間とは対照的に、放棄地には公認された身分はいっさい与えられていない。放棄地は保護区でもないし、もはや休耕地でもなく、そういった申告された管理システムにまったく対応していない。 

(上掲書、157ページ)