2008-01-01から1年間の記事一覧

始まりと復古

André Lacocque & Paul Ricoeur, Penser la Bible, Paris: Seuil, 1998. http://www.amazon.fr/dp/2020316773/ この論集に収められているリクールの論考「Penser la Création」は、聖書や神学というテーマを離れて、「起源l'origine」とその「連続性continui…

不気味さとキッチュ

白い大理石の彫像は単純に「美術作品」として享受しうるのに、蝋人形や着色彫像などの「過剰に似ている」像はどうして不気味に思えるのか。ずっと疑問に思っていたのだけれど、最近「不気味の谷」という概念があることを知った。 ウィキペディアの「不気味の…

ABCDaireに取り零していた写真を追加。歩み寄る人物(c.f.受胎告知の大天使)のKと、死せるキリストの身体(ピエタ、埋葬、十字架降架)のM。 http://d.hatena.ne.jp/rodano/20080810

探し物と漂流物

World Catという文献検索システムを、初めて使ってみた。 http://www.worldcat.org/ 探していたのは、Rosaline Bacou et al., Le cabinet d’un grand amateur P.J. Mariette 1694-1774. Dessins du XVe siècle au XVIII siècle, Paris : Musée du Louvre, Ga…

イタリアの額縁

ドーリア・パンフィリ絵画館(Galleria Doria Panphilj)の売店にあった書籍、『La cornice italiana : dal Rinasciment al Neoclassico』(Electa刊)。題名通り、絵画作品の額縁に焦点を当てた書。高い、重い、差し当たって使わないの3点が揃っていたので…

L'invenzione dei Fori Imperiali, Musei Capitolini (Roma)

8月2日、ローマ旅行の最終日に訪れたカピトリーニ美術館では、「L'invenzione dei Fori Imperiali, demolizioni e scavi : 1924-1940(フォリ・インペリアーリの発明、破壊と発掘:1924年〜1940年)」と題された企画展が開催されていた。考古学や古代の「再…

ABCDaireを久し振りに更新しました。→ http://d.hatena.ne.jp/rodano/20080807

7月末から8月頭にかけて、調査を兼ねてローマに行ってきた。夏のローマは蒸し暑くて川辺では蝉が鳴いていて、ところどころに植わっている笠松の並木もどこか日本の夏を連想させる。ディジョンもパリも薄灰色の建物に柔らかい影が落ちているけれど、ローマは…

ブルゴーニュ生活博物館

旧市街まで出掛けたついでに、Musée de la vie BourguignonneとMusée d'art sacréへと赴く。 Musée de la vie Bourguignonne(ブルゴーニュ生活博物館、一般的な言葉を使うなら民俗博物館)は、かつては修道院だった建物にある。 1階は企画展示室で、現在は…

未来のアリス

YouTubeを渉猟していて、面白いフレグランスのCMを何本か見つけた。シンデレラや不思議の国のアリスといった少女的なメルヘンを、妖艶で蠱惑的な大人の女性で演じ直す趣向。空間の構成も、都市の中に開いた幻想空間という感じだ。近未来的で無機質なのにファ…

ローマ帝国再興

ナチス・ドイツの「第三帝国」は有名だが、そもそもムッソリーニも「ローマ帝国の再興」を掲げてファシスト政権樹立・帝国主義的侵攻を行っている。この辺りを攫ったら、別の視点からのヒントが見えてくるかも。

Born-commercial art works?

Consortiumでインターン研修を行った際に、ショップ設営の手伝いもしたのだが(その日記)、その時以来「アート作品/商品」という二種の融合状態について、ずっともやもやと考えてきた。芸術作品が商品となる、あるいはその安価なコピーが大量生産の商品と…

廃墟のReminiscence

ふと頭の片隅に島崎藤村の「千曲川旅情の歌」の一節が浮かんできて、残りの部分が気になったので調べてみた。 「千曲川旅情の歌」 昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにをあくせく 明日をのみ思ひわづらふいくたびか栄枯の夢の 消え…

ディジョン建築探訪

FRACのギャラリーに行く途中で、顔貌と人体と多種多様な装飾パターンがファサードに蝟集した、なんとも不思議な家を見つけた。1881年に建てられたらしきこの家には、現在も二人の住人の表札が掛かっている。脇に廻ってみると、そこには平凡な石造りの壁。ど…

FRACのギャラリーと同一の敷地内、向かい合わせに建てられていた倉庫の内部。大量の古着がストックされていて、クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーションみたいだ。もちろんこれは現代アートの展示ではなくて、現役で活躍している商業設備だけれど…

反復される退屈

薄曇りの土曜日(19日)、FRAC(Fonds Régional d'Art Contemporain de Bourgogne、サイト)のギャラリーに足を運ぶ。FRACとは1983年以来フランスの各地方毎に設置されている組織で、その名(現代美術地方財団)の通り現代アート関連の普及・援助・教育活動を…

ジウゼッペ・ヴァラディエール

ほどなくピラネージは、自分よりも遥かに若いローマの建築家、ジュゼッペ・ヴァラディエルの中に、ひとりの追随者を見いだした。ヴァラディエルの建物の数々と1790年頃に描かれた数多くの図版は、彼もまた、各要素の何らかの新しい秩序をなし遂げようと望ん…

urban archeology

たまたま立ち読みしたファッション誌『Numéro』の8月号に掲載されていた廃墟写真家コンビ、Yves MarchandとRomain Meffre。さっそくオンラインで検索してみたら、本人たちのサイトとブログが出てきた。 サイト:a work in contemporary ruins & urban archeo…

モザイク都市

1ヶ月前の出来事になってしまうが、クリニャンクールの蚤の市で見つけたローマン・モザイク(micro-mosaïque)の細工品。ヴェネツィア(左)とローマ(右)の代表的な観光名所が、おそろしく微細なモザイクによって描き出されている。店主によると、19世紀の品…

考古学と郷土愛

18世紀に勃興したエトルリア考古学ブームの根底には、ローマ中心主義への反発と、イタリア人考古学者たちの「郷土愛」とがあった。 Thomas Dempester made a hit because the Italian scholars were looking for a new focus for their patriotic feelings a…

グラビア

公立図書館の傍にある昔ながらの装丁屋にふらりと立ち寄ったら、19世紀のディジョンを写した写真が5ユーロで売られていた。ノートルダム寺院のガーゴイル、サン・ベニーニュやサン・ミシェルの教会、メゾン・ド・カリアテイッド(人体柱の家)、成角透視図法…

いなか、のじけん

一昨日、ふとした切っ掛けで知って、寝食を忘れて読み耽ってしまったサイト。 無限回廊 このサイト名は有名サイトとして見聞きしたことがあるので、ご存知の方も多いかもしれない。特に「津山三十人殺し事件」と「狭山事件」に没頭してしまった。前者は、溝…

約3ヶ月前の日記に書いたDictionnaire portatif des Beaux-arts(改訂版1759年、L.M.+++. Avocatの名の下に刊行された初版は1752年)を、公立図書館で漸く閲覧する。その「完璧な自然(Nature parfaite)」の項では、完璧な自然模倣を実現するためには、つま…

ディジョン建築探訪

昨年の秋から、MJC(maison des jeunes et de la culture,英語で言うyouth club)の日本語教室でアシスタントをやらせて貰っている。その教室のOBである大学生が中心となって、日本語の自主勉強会を週1回開いているという。その会場となっているアパルトマ…

ディジョン建築探訪

集合住宅が建ち並ぶ郊外を散策中に見つけた、モダンなデザインのサント・ベルナデット教会。プレートには、Joseph Belmontなる建築家の設計とある。緩い曲線を描いた軒下の広く張り出す形態は、むしろ日本の神社建築を連想させる。

Stage au Consortium

現代アートギャラリーでのインターン研修の2週目。Rachel Harrison(Greene Naftali Galleryのページ)というNY在住のアーティストの展覧会設営作業を行う。 搬入されてきた作品の数々。 今回の展示で中心となるのは、抽象的な立体造形にready madeのオブジ…

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ディジョン建築探訪

サン・ミシェル教会。ゴシックとルネサンスの混淆様式。壁面に細やかな装飾の施されたこの教会は、観光案内書では「石造りのレース(une dentelle de pierre)」と形容されている。とりわけファサードの穹窿を埋め尽くす夥しい数の天使たちを眺めていると、…

教皇クレメンス13世

最盛期のピラネージのパトロンだったのが、同郷人(ヴェネツィア出身)の教皇クレメンス13世(在位1758-1769)である。クレメンス13世の時代は、ヨーロッパ各国(スペイン、ポルトガル、両シチリア王国、ナポリ王国)でイエズス会士追放の動きが強まり、また…

ディジョン建築探訪

ライオンの棲む家。木彫で表現された、重たげだけれどもダイナミックな襞が目を奪う。