起源と古代をめぐる言説

廃墟画通史

廃墟という概念とイメージの変遷を辿った、豪華な大型画集。廃墟論としてはオーソドックスな理論構成だが、1960年代以降の近現代アートまで網羅している。 auteur: Michel Makarius titre: Ruines éditeur: Paris: Flammarion date: 2004 table des matières…

ラファエッロと古代ローマの復興

ラファエッロと古代ローマ建築―教皇レオ10世宛書簡に関する研究を中心に作者: 小佐野重利,姜雄出版社/メーカー: 中央公論美術出版発売日: 1993/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る教皇レオ10世に当てたラファエッロの書簡の邦訳と、その背…

ヴィンケルマンが「端緒」とされるギリシア熱の背景について。 ヴィンケルマンが「ギリシア人の精神」を推奨したことは、その当時としては珍しいことだった。最後に彼が住んだローマは、ローマ・カトリックの中世とルネサンスを通じてヨーロッパ文明の起源で…

法隆寺とパルテノン―西洋美術史の眼で見た、新・古寺巡礼作者: 田中英道出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2002/04/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る岡倉天心、和辻哲郎・・・歴史は確信犯的かつ無反省に繰り返すということで…

パリ4大の博論審査スケジュール一覧の中に、自分の関心と重なりそうなものを発見。 "Etienne Dupérac, graveur, peintre et architecte (vers 1535 ?-1604). Un artiste-antiquaire entre l’Italie et la France" http://www.paris4.sorbonne.fr/fr/article…

アメリカ2

文化的統一を求めたアメリカのユートピアニスムが、[独立直後の記念メダル図像や「自由の女神像」におけるギリシア女神、ジェファーソンのパッラーディオ主義、ワシントン都市計画やアメリカ第二銀行の新古典主義など]ヨーロッパのアレゴリーと古典主義的形…

古代憧憬と機械信仰―コレクションの宇宙 (叢書・ウニベルシタス)作者: ホルストブレーデカンプ,Horst Bredekamp,藤代幸一,津山拓也出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 1996/02メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (3件) を見る

今日の不思議

ヴィンケルマンの『古代美術史』の原著が、何故か農学部図書館所蔵の件。 https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/books-query?mode=2&code=21587303&key=B116333101400641 この本の構成は、笑いを誘うほどスクエアで、邦訳版を参考にするならば「部>章>…

・ギリシア派の建築理論家・イエズス会士、マルク・アントワーヌ・ロージェ(Marc-Antoine Laugier, 1713-1769)の著作『建築試論(Essai sur l'architecture)』(1755)より。この著作の「原始の小屋(田野の小屋)」という扉絵は、ギリシア派たちの思想を体現…

「こうしてわたしはイタリア人の太古の知恵をラテン語そのものの起源から導き出すことを思い立ったのであった」イタリア人の太古の知恵 (叢書・ウニベルシタス)作者: ジャンバッティスタヴィーコ,上村忠男出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 1988/10メ…

ギリシア・ローマ論争には、大別すると二つの側面がある。 歴史(考古学)的な、少なくとも当時の認識ではある程度「実証的」な科学の側面と、 美学的な趣味判断の側面と。 他に、新旧論争や「想像力」をめぐるこの時代の芸術論、それから多くの研究者がピラ…

Elizabeth Wanning HarriesのThe Unfinished Manner: Essays on the Fragment in the Later Eighteenth Century (U.P. of Verginia, 1994. http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0813915023)を入手。廃墟熱(とりわけイギリスの人造廃墟ブーム)につい…

幻想の中の過去

早くはドイツの哲学者フリードリヒ・フォン・シュレーゲルが、一八〇二年にミュゼ・ナポレオンに展示されたベアト・アンジェリコ、デューラー、ファン・エイクらの作品を称讃し、その後ナザレ派やラファエル前派の芸術や思想において表面化してくる、このよ…

古代の幻―日本近代文学の“奈良” (SEKAISHISO SEMINAR)作者: 浅田隆,和田博文出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2001/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る冒頭章に収められたシンポジウム記録「古代という幻の装置」をコピー。文学研究の…

黒いアテナ―古典文明のアフロ・アジア的ルーツ (2〔上〕)作者: マーティン・バナール,金井和子出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2004/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 82回この商品を含むブログ (7件) を見る黒いアテナ―古典文明のアフロ・アジア…

幻影のローマ―“伝統”の継承とイメージの変容 (シリーズ歴史学の現在)作者: 歴史学研究会出版社/メーカー: 青木書店発売日: 2006/03/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る“帝国”―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性作者: アント…

苅部直「和辻哲郎の「古代」――『古寺巡礼』を中心に――」『日本近代文学』第72集、2005年、177−189ページ。 フェノロサ−天心流のギリシア/天平幻想の継承者、和辻の古代観について。日本近代文学会大会での発表原稿とのこと。ちなみに、このときの大会企画テ…

幻想の東洋〈上〉―オリエンタリズムの系譜 (ちくま学芸文庫)作者: 彌永信美出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/10メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含むブログ (8件) を見る幻想の東洋〈下〉―オリエンタリズムの系譜 (ちくま学芸文庫)作…

高木博志「近代天皇制と古代文化――「国体の精華」としての正倉院・天皇陵」網野善彦編『岩波講座天皇制と王権を考える 第5巻 王権と儀礼』岩波書店、2002年、245−272ページ。)

エトルリア神話

フィレンツェにおけるエトルリア神話:ノアによって建設されたエトルリアを、トスカーナ諸都市の直接の祖先とみなし、建国から約600年後、ノアの子孫であるエジプトのヘラクレスがフィレンツェを創建したとするもの。フィレンツェ公国の二代目君主コジモ1世…

残存するイメージ―アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間作者: ジョルジュディディ=ユベルマン,Georges Didi‐Huberman,竹内孝宏,水野千依出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2005/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 78回この商品を含むブ…

あるゼミにて、明治20年代のギリシア幻想について分析した拙論を発表する機会をいただく。フェノロサや岡倉天心、伊東忠太らのギリシア熱(=日本美術史の起源に存在するギリシア)が、明確な歴史意識に支えられたものであるのに対して、志賀重昂の国土や風…

近代においても、国土が一つの現実として強固に浮上してくるのは、政治権力が国土なるものの統治を行い、また文学の言語がその内面的な現実を物語りはじめるときであった。力と言葉というものが互いに重なりあい、補いあいながら、国土の「実を定め」ていく…

原稿としてまとめたものを、すでに提出済みなのだけれど、いろいろと修正したいところが出てくる。日本の「国土」という統一的な概念の形成と、自国の「風景」への眼差しとの関係性がいまひとつ不明確だ。国家行政のための区分として存在し、地図によって視…

神話的な古代は近代という文化意識に随伴して、反復的に蘇生する悪夢めいた分身である。つねに自分自身を革新する運動としての近代は、絶えず伝統の切断をおこない時間的な連続性を断ち切ることによって逆に、アナクロニックな神話的古代の幻覚を生む。原形…

藤島武二《天平の面影》

天平の面影、作家藤島武二氏人に語りて曰く、此画を描くに至りし動機ども称すべきハ昨年奈良に遊びて普く古画古物像を渉猟し端りなくも正倉院珍襲の箜篌(藤島作品において女性が持っている竪琴状の楽器)を一見したり。(中略)而して之を描くにハ古代画風…

磯崎新『始源のもどき』と内田隆三『国土論』が緊急に必要なのだけれど、図書館も書店も開いていないので困った。新年なので犬。年賀状のデザインをどうしようかと考えながら明治20年代の『國華』で調べ物をしていたとき、偶然見つけた図版。丸山応挙による…

岡倉天心(日本美術史講義におけるギリシア文明東漸説)や伊東忠太(法隆寺エンタシス説)の「ギリシア幻想」を追っていて面白いのは、むしろ「ギリシア的なもの」の幻視がさかんになった明治20年代を過ぎてからの彼らの進路である。天心は、インド訪問の際…

フェノロサと岡倉[天心]の提示した概念は、空間を時間に置き換える点で効力を発揮した。それは二つの方向に社会を再布置するものだった。それはまず、この列島にある異種混交的な形象を組織し、発展する日本の国家という物語に仕立てること、つぎに、この…

日本美術史における「古代」概念の構築――フェノロサ「奈良ノ諸君ニ告グ」(1888=明治21年6月5日) 奈良の浄教寺で行なわれた演説。ここでフェノロサは、まずローマと奈良とをアナロジーで捉える。かつて美術と宗教の中心であり、そしてその衰亡の後はしばら…