Egyptomania

最近オンラインニュースで知って、妙に興味を惹かれてしまったのが、青森県戸来村に伝わる諸伝説。村内の円形墳墓が、ゴルゴダでの磔刑を免れ日本へと渡来してきたイエス・キリストの墓であるだの、ピラミッドが存在するだの、ヘブライ語ユダヤ文化圏に属するだのというもの。
今は日本語文献に当たれる環境にないので、ひとまずオンラインで情報を検索してみる。
まず、「キリストの墓」伝説は、天津教なる神道系宗教の宮司である竹内巨麿という人物によって、1935年(昭和10年)から提唱され始めたものらしい。竹内家に伝わる「古文書」(偽造との説もある)に収められた「イエス・キリストの遺書」が、その論拠だとか。
竹内文書Wikipedia
上のWikipediaの記述を見ると、どうやら「竹内文書」なるものの大意は、日本(古代日本の天皇神道)が世界の諸文明の始源であり、かつその集積地であったとの主張にあるようだ。
「ピラミッド」とは、1934年に鳥谷幡山という画家が発見したもの。折しも酒井勝軍Wikipedia)なる人物が、「エジプトにピラミッド築造技術をもたらしたのは日本人」との説を唱えており、戸来村のそれは「日本のピラミッド」として、観光資源化されたのだと言う。なお酒井は、日本人・ユダヤ人同祖説の提唱者でもある。
明治時代、『史海』などの史学雑誌に日本人や日本語の起源について、かなり眉唾ものの珍説が載せられていたことは、以前に論文で触れたことがあるが、昭和になってもこの手の心性は生き続けていたようだ。1930年代前半といえば第二次大戦前夜のきな臭い時期だが、そういった時代の空気も、「世界の起源、西洋文明の始源としての日本」というトンデモ学説の基調に、多少なりとも関係していたのだろうか。
ピラネージや18世紀建築家(ほとんどがフリーメイソン会員)の「エジプト熱」を調べていると、日本の「エジプト(をはじめとする古代文明)熱」を生み出すに至った、怪物的な想像力のメカニズムに、激しく興味をそそられる。