コレクションの詩学

オブジェの思考:瀧口修造、夢の漂流物

私の部屋にあるものは蒐集品ではない。 その連想が私独自のもので結ばれている記念品の貼りまぜである。時間と埃りをも含めて。石ころとサージンの空罐とインドのテラコッタ、朽ちた葉、ミショーの水彩、あるいは「月の伝説」と命名されたデュシャンからの小…

オブジェとの邂逅、石の夢

太陽王アンドレ・ブルトン作者: アンリカルティエ=ブレッソン,アンドレブルトン,Henri Cartier‐Bresson,Andr´e Breton,松本完治出版社/メーカー: エディションイレーヌ発売日: 2016/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 私は次のことを特に…

ポール・ヴァレリー「美術館の問題」(1923年初出) より 美術館はあまり好きではない。見事なものはたくさんあるが、居心地のよい美術館というものはまったくない。分類、保存、公益といった理念は正しいし明快だが、愉楽とはあまり関係がない。美術品のほ…

絵画をいかに味わうか作者: ヴィクトル・I.ストイキツア,岡田温司,松原知生;喜多村明星;大橋完太郎出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/11/24メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (3件) を見るユベール・ロベールによる、予め廃墟化した…

アートフル・サイエンス―啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育作者: バーバラ・M.スタフォード,Barbara Maria Stafford,高山宏出版社/メーカー: 産業図書発売日: 1997/03/01メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (17件) を見る

Le RoyのLes ruines des plus beaux monuments de la Grèceのフランス語版を探していたところ、INHA(フランス国立美術史研究所)図書館のサイトで、電子情報化された書籍を無料でダウンロードできるサービスを発見。 http://bibliotheque-numerique.inha.fr/…

「アット・ホーム」な美術館?

ブルゴーニュ地方の名士だった一家の邸宅を利用し、そのコレクションを元に設けられた美術館Musée Magninの内装。どこまで当時の室内が保存・再現されているのかは定かではないが、ブルジョワ階級のコレクターがいかに美術品を保有し展示していたのかをしの…

Musée de l'histoire naturelle

ディジョンの自然史博物館 鳥類の剥製が並ぶ展示室。この部屋だけ、昔ながらのガラスケースが使われている。 鳥の特徴的な嘴の形態と用途を、類似の道具(魚籠、ピンセット、杓子など)と共に展示したもの。 monstre(奇形)の標本。シャム双生児の剥製。こ…

こちらに書いた、バルザックによる古道具屋の描写に呼応するものとして、フローベールによる骨董屋。 彼らは骨董店の並んだあたりをぶらついた。また、工芸学校、サン=ドゥニ寺院、国営ゴブラン織工場、廃兵院(アンヴァリード)、その他あらゆる公開のコレ…

les brique-a-braques

バルザックの『あら皮』で、主人公ラファエルが古道具屋に足を踏み入れた場面の描写から。 この店には神と人間のあらゆる作品がつのつきあわせて、複雑な光景を呈していることが一見してうなずけた。剥製の鰐、猿、大蛇などが聖堂の焼絵玻璃にほほえみかけて…

ミュージアムの精神史

自然の占有―ミュージアム、蒐集、そして初期近代イタリアの科学文化作者: ポーラフィンドレン,Paula Findlen,伊藤博明,石井朗出版社/メーカー: ありな書房発売日: 2005/11メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (28件) を見る

博物館・美術館を巡る問題について

メーリングリストで回ってきたものの転載です。 ■公開講演会「博物館が危ない! 美術館が危ない! ―指定管理者制度・公共サービス改革法の落とし穴―」の開催(ご案内) 日 時:11月4日(土)13:00〜17:00 会 場:東京大学理学部小柴ホール 主 催:日本学術…

美術館・展覧会・コレクション

SITE ZEROのウェブ批評欄の供給を絶やさないために、何か書評を書くべき書物を読まなければならず、それで故Francis HaskellのThe Ephemeral Museum: Old Master Paintings and the Rise of the Art Exhibition (Yale U.P., 2000.)を読んでいる。(微妙に順…

ミュージアムについてであれ、コレクションについてであれ、調べている途中で必ず突き当たるのが、美術を鑑賞することによって内面を鍛錬・教化するという発想がどのようにして生まれてきたのかという問いである。それは単なる「見ることの悦楽」の追究では…

M―と云う西洋絵画蒐集家についてちょっと調べていて、その関係で野上彌生子の『眞知子』を読む。これが意外と面白くて、ついうっかり読み進めてしまう。当時のプチブル階級における西洋文化の受容状況が、音楽・美術・文学から社会思想に至るまで、かなり詳…

プーシキン美術館展(東京都美術館、〜12月18日) 旧制ロシアの実業家モロゾフとシチューキンによる絵画コレクション(そのほとんどがフランス近代絵画)のエッセンスを抽出した展覧会。 写真パネルから伺える当時の展示手法が面白い。モロゾフ、シチューキ…

ヴァレリーの「人と貝殻」絡みで貝殻の博物絵を探していて見つけたサイト。 カナダのMcGill大学で美術史を専攻するGilles Thibault氏の、博論用メモらしい。 Cabinet de curiosites 「驚異の陳列室」や博物学に関する図版が豊富。内容は概括的・通史的。