美術史の諸言説

西洋との対話

4月28日のエントリーでも触れた矢代幸雄『西洋美術史講話』(1921)では、1925年刊行のSandro Botticelliで用いられることとなる基礎的分析概念が、既に体系的に提示されている。「古典的=南欧=ギリシア思想=自然への志向」と「ゴシック=北方=キリスト…

ヴィンケルマンについて

Eliza Marian Butler (1885-1959): The Tyranny of Greece over Germany ― A study of the influence excercised by Greek art and poetry over Great German writers of the eighteenth, nineteenth and twentieth centuries (1933) 参考になるかならないか…

西洋との対話

加藤哲弘「近代日本における美学と芸術研究」2002年。科研の報告書らしい。 http://homepage2.nifty.com/katotetsu/tk01text.pdf

西洋との対話

三浦藤作『民衆藝術夜話』秀山堂文庫 趣味叢書1、1926年(大正15年) これも書庫でたまたま見つけた一冊。少なくともこの時代から、「民衆芸術」という概念や「民衆教化・社会教育としての芸術教育」という発想のあったことが伺える書。「民衆芸術」のカテゴ…

西洋との対話 矢代幸雄関連文献

大正から第二次大戦まで 矢代幸雄『西洋美術史講話 古代篇』(付・図録篇)岩波書店、1921年(欧州留学前に書かれた、東京美術学校講師時代の講義録。ちなみに定価9圓。) 同上「日本の立場より見たる西洋美術」財団法人啓明会第26回公演集、1928年9月 同上「…

西洋との対話

矢代幸雄関連の書籍を見つけようと書庫でカサコソしていたところ、地味に強烈な電波を発する一冊を発見。 東洋美と西洋美の問題、言ひ換へれば東洋趣味と西洋趣味の問題は現代の重要問題の一つであることは誰しも異論のないところであらう。然しこの問題は大…

指で視る

ヘルダー『彫塑論』:視覚と触覚の不可分性を説いた芸術論。 『ヘルダー ; ゲーテ』登張正実責任編集、中央公論社、1975年所収(教養図・開架080:Se22:7[W]) ウィリアム・モリヌークスからジョン・ロック宛に、開眼手術を受けた盲人の認識について問う書簡…

指で視る

ロジェ・ド・ピール『絵画原理講義』(1708)の翻訳ゼミで「彩色」の章を担当しているのだが、そこでは「盲人の彫刻家」を巡る、面白いエピソードが紹介されている。彼は大理石像や生きている人間を手で触ることで、その輪郭や凹凸を確かめ、実物にそっくり…

もうひとつのルネサンス (平凡社ライブラリー)作者: 岡田温司出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2007/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る個人的な関心から、第5章の「ディレッタント登場」と第7章の「アンチ美術…

西洋との対話

今、矢代幸雄のボッティチェリ論の「感覚的(sensuous)ボッティチェリ」という章を読んでいる。率直に言えば、矢代は文章も下手だが、それ以前にあまり論理的・体系的な思考のできる人物ではない。だからこそ、妙な発想が抑圧されないままあちこちに残って…

西洋との対話:矢代幸雄とヴェルフリン

矢代はそのボッティチェリ論(英文初版1925年、邦訳版:吉川逸治・摩寿意善郎監修、高階秀爾他訳、岩波書店、1977年)で、自然模倣の態度を「線的」なものと「色調的」なものとの二項で整理している。(ボッティチェリの絵画は、「線的」模倣に分類されてい…

西洋との対話

西洋美術と日本(東洋)美術の形態的比較が可能となる基盤について、参考になりそうな文章を発見。 ふつう「比較芸術学」と呼ばれるものは、西洋と東洋というような遠隔の地域における特定の芸術ジャンル同士の比較論的考察である。ここでは基本的に発生関係…

日本における西洋美術史/西洋との対話

矢代幸雄の「西洋との対話」を本格的に分析するに当たって、補助線になるかならないか分からないけどひとまず借りてみた書籍。ルネサンス研究 ルネサンスの芸術家 (下村寅太郎著作集)作者: 下村寅太郎出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1989/06メディア: …

アロイス・リーグル『近代の記念物崇拝――その性格と起源(Der moderne Denkmalkultus : sein Wesen, seine Entstehung)』(Wien : Braumueller, 1903) 歴史的記念物における「古さ」という価値について。 最新仏訳版:Aloïs Riegl, Le Culte moderne des m…

法隆寺とパルテノン―西洋美術史の眼で見た、新・古寺巡礼作者: 田中英道出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2002/04/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る岡倉天心、和辻哲郎・・・歴史は確信犯的かつ無反省に繰り返すということで…

パリ4大の博論審査スケジュール一覧の中に、自分の関心と重なりそうなものを発見。 "Etienne Dupérac, graveur, peintre et architecte (vers 1535 ?-1604). Un artiste-antiquaire entre l’Italie et la France" http://www.paris4.sorbonne.fr/fr/article…

SITE ZERO Reviewにフランシス・ハスケル『歴史とそのイメージ』の書籍紹介を寄稿いたしました。 大著でもあり、いろいろと自転車操業だったなかでの執筆だったこともあり、「批評」というレベルには至っておりませんが。機会があったら、またここで補足しよ…

一角獣作者: リュディガー・ロベルトベーア,R¨udiger Robert Beer,和泉雅人出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1996/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る一角獣と言う図像モティーフの伝播と変形過程について。 中世期美術館にもう一度…

パリスの審判―美と欲望のアルケオロジー作者: ユベールダミッシュ,Hubert Damisch,石井朗,松岡新一郎出版社/メーカー: ありな書房発売日: 1998/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るトロイア戦争の引き金となった「パリスの審判」というモテ…

講演会のお知らせ

アンヌ=マリー・クリスタン(パリ第七大学) 講演テーマ:Du peintre-écrivain à l'assembleur d'image : Eugène Fromentin et Philippe Clerc 司会:三浦篤(東京大学) 11月27日(月)午後4時30分〜6時30分 東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーシ…

今日の不思議

ヴィンケルマンの『古代美術史』の原著が、何故か農学部図書館所蔵の件。 https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/books-query?mode=2&code=21587303&key=B116333101400641 この本の構成は、笑いを誘うほどスクエアで、邦訳版を参考にするならば「部>章>…

メーリングリストで回ってきた情報です。 立教大学文学部百周年記念国際シンポジウム 肖像と個性(Portraits and Personality) 2006年10月28日(土) 午後1:00 − 6:30 立教大学 太刀川記念館3階 多目的ホール 英語・日本語 申し込み不要・入場無料開会の辞…

ヴィンケルマン

古代美術史作者: ヨハン・ヨアヒムヴィンケルマン,Johann Joachim Winckelman,中山典夫出版社/メーカー: 中央公論美術出版発売日: 2004/12メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (14件) を見る 『ギリシア美術模倣論』柳澤大五郎訳、座右宝刊…

森鷗外と美術 和歌山県立近代美術館にて〜10月22日(日) 鴎外森林太郎の見た明治・大正の美術 近代日本を代表する作家・森鴎外(本名:林太郎)は、同時代の美術にも深い関わりを持っています。今回の展覧会は、美術の分野における鴎外の活動を紹介するととも…

日本近代美術史論 (ちくま学芸文庫)作者: 高階秀爾出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/06メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (13件) を見る主に明治期に活躍した画家たち(高橋由一、黒田清輝、青木繁、狩野芳崖、横山大観、菱…

入手文献 矢代幸雄「財団法人啓明會第26回講演集 日本の立場より見たる西洋美術」1928年。 矢代幸雄「財団法人啓明會第30回講演集 西洋美術に於ける東洋的要素」1928年。 Yukio Yashiro, Sandro Botticelli and the Florentine Renaissance, revised ed., Lo…

矢代幸雄『日本美術の再検討』

日本美術の再検討作者: 矢代幸雄出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 1994/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『藝術新潮』上に1958年1月から1959年3月まで連載された同題の論考を、単行本に纏めたもの。単行本化に伴い、「今日の美術史的知識か…

矢代幸雄『忘れ得ぬ人びと 矢代幸雄美術論集Ⅰ』岩波書店、1984年。 国内外の友人や恩人たちについての思いで語り。若い頃から親交のあった英米の東洋美術史研究家の名も数名挙げられているが、目に付くのが「個人の美術愛好精神は国家間の戦争をも超越した」…

矢代幸雄とボッティチェッリ

現在、学生有志で「受容としての日本思想研究会」というものをやっていて、そこでの発表の関係で矢代幸雄の著したテクストについて調べている。 矢代は、日本における西洋美術史(とりわけイタリア・ルネサンス絵画)研究の第一人者であり、学術的なスタイル…

アビ・ヴァールブルクがトビアスを指して言うTobiuzzoloについて。 −olo:接尾語。「小さな」を表す縮小辞、「愛らしさ」を示す愛称辞。(小学館伊和辞典より) −chenとか−et(te)みたいなものですね。