日本における西洋美術史/西洋との対話

矢代幸雄の「西洋との対話」を本格的に分析するに当たって、補助線になるかならないか分からないけどひとまず借りてみた書籍。

下村寅太郎についてのデータ:http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/nittetsu/guidance/philosophers/shimomura_guidance.html
西田幾多郎の弟子であり、「近代の超克」対談にも列席。ライプニッツ哲学からルネサンス美術研究まで手掛けている。1902年生まれであるから、矢代より一回り年下。芸術への思索を手掛けるようになったのは、かなり後年になってから。
矢代も「魂」や「精神」という言葉を(不用意に?)使ってしまうのだが、正直そこには哲学的な素養に裏打ちされた厳密な意味が存在するとは思えない。矢代の時代の「美術史学」が、当時の知的状況やアカデミズムの中でいかなる位置に置かれていたのかにも、留意しなければならないだろう。(少なくとも、現在ほど独立的というか閉鎖的な状況ではなかったであろうから。)そもそも矢代の出発点は「英文学者」であり、ボッティチェッリ論も文化研究というスタンスで行っていたらしいのだ。
ボッティチェッリ論の巻末のビブリオグラフィーを見ると、矢代も例えばブルクハルトには目を通していたようだが、「受容」というレベルにあるのかどうかは疑わしい。
ちなみに矢代(1890−1975)と和辻哲郎(1889−1960)はほぼ同年齢。比較して意味のある二項なのかはよく分からないが。