指で視る

ヘルダー『彫塑論』:視覚と触覚の不可分性を説いた芸術論。
『ヘルダー ; ゲーテ』登張正実責任編集、中央公論社、1975年所収(教養図・開架080:Se22:7[W])
ウィリアム・モリヌークスからジョン・ロック宛に、開眼手術を受けた盲人の認識について問う書簡が送られたのが1693年、それを受けて『人間知性論』の第二版が刊行されたのが翌94年、ライプニッツの『人間知性新論』の執筆が1701-3年、バークリーの『視覚新論』が1709年刊行である。1708年に刊行された論考の中で盲人彫刻家の例を挙げ、輪郭(contour)と比例(proportion)にまつわる技である素描と、光(による視覚)は別個のものであると説くド・ピールも、当時の思潮の流れの中にいたということなのかもしれない。(勿論、ド・ピールはモリヌークス問題に直接言及はしていない。)

時代は下るが、「触覚」的な視覚を説いた美術史家たちの例。

  • アロイス・リーグル『美術様式論』:美術の様式史を「視覚性」と「触覚性」の二極の間の振幅として見る。
  • アドルフ・フォン・ヒルデブラント『造形芸術における形の問題』:視覚における「触覚性」について。
  • バーナード・ベレンソン:観者の視覚の「触覚性」に訴えかけるような造形的特徴について、「触覚値」という概念を導入。