美術史の諸言説

ムネモシュネ解読プロジェクト

類似に基づく連想から見つけ出した画像。 踊るニンフたち、左から ヤン・ロスト(ブロンズィーノの下絵に基づく)『春』1546年、踊るフローラ マドレーヌ・ヴィオネ『浅浮彫』1931年、衣を翻す活人画(画像はこちらから) オールフ・ヴィフ『選帝侯アウグス…

残存するイメージ―アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間作者: ジョルジュディディ=ユベルマン,Georges Didi‐Huberman,竹内孝宏,水野千依出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2005/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 78回この商品を含むブ…

藤島武二《天平の面影》

天平の面影、作家藤島武二氏人に語りて曰く、此画を描くに至りし動機ども称すべきハ昨年奈良に遊びて普く古画古物像を渉猟し端りなくも正倉院珍襲の箜篌(藤島作品において女性が持っている竪琴状の楽器)を一見したり。(中略)而して之を描くにハ古代画風…

岡倉天心(日本美術史講義におけるギリシア文明東漸説)や伊東忠太(法隆寺エンタシス説)の「ギリシア幻想」を追っていて面白いのは、むしろ「ギリシア的なもの」の幻視がさかんになった明治20年代を過ぎてからの彼らの進路である。天心は、インド訪問の際…

フェノロサと岡倉[天心]の提示した概念は、空間を時間に置き換える点で効力を発揮した。それは二つの方向に社会を再布置するものだった。それはまず、この列島にある異種混交的な形象を組織し、発展する日本の国家という物語に仕立てること、つぎに、この…

日本美術史における「古代」概念の構築――フェノロサ「奈良ノ諸君ニ告グ」(1888=明治21年6月5日) 奈良の浄教寺で行なわれた演説。ここでフェノロサは、まずローマと奈良とをアナロジーで捉える。かつて美術と宗教の中心であり、そしてその衰亡の後はしばら…

ミシェル・レリスとピエール・クロソウスキーにおけるテクストとイメージについての研究発表を聞く。発表者はバタイユ周辺の文学者を研究している方で、分析もレリスにおけるエクリチュールの問題に集中していたが、「エクフラシス」や「情念定型」など、自…

矢代幸雄

日本における西洋美術史研究の嚆矢、矢代幸雄についてウェブ検索していたところ、こんなサイトをみつけた。(InterCommunicationのバックナンバーをオンライン上で公開したもの。リンク先は1996年発行のNo.15。)こちらのページの高階秀爾氏の発言によると、…

ミュージアムについてであれ、コレクションについてであれ、調べている途中で必ず突き当たるのが、美術を鑑賞することによって内面を鍛錬・教化するという発想がどのようにして生まれてきたのかという問いである。それは単なる「見ることの悦楽」の追究では…

眼の神殿―「美術」受容史ノート作者: 北沢憲昭出版社/メーカー: 美術出版社発売日: 1989/09メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (19件) を見る〈日本美術〉誕生 (講談社選書メチエ)作者: 佐藤道信出版社/メーカー: 講談社発売日: 1996/12/10…

ある芸術作品やその作者を取り巻く「社会的背景」や「社会的コンテクスト」の探究を標榜する美術史研究は多い。ただ、自分はそういった研究(の一部)が有している、前提条件への無邪気さというか素朴さに、漠然とした違和感を抱いていた。既にディディ=ユベ…

アートブックガイド1995〓2005 現代美術を理解するための100冊1 2

Sven Sandstroem, Levels of unreality : Studies in structure and construction in italian mural paintings during the Renaissance, Almqvist & Wiksells Boktryckeri, 1963. 絵画内空間における「現実らしさ」の諸レベルについて。ならびに絵画内空間と…

何かの検索の折に偶然引っ掛かったページ、「アーティストの痕跡:身体編」。[美術史の諸言説][署名論] ストイキッツァが論文集"Der Kuenstler ueber sich in seinem Werk"に寄稿している論文を本腰を入れて読んでいるけれど、ほとんど全ての単語を辞書…

フレンチ・ロココの宮廷画家であると同時に、解剖画家でもあった、ジャック・ゴーティエ=ダゴティ(Jacques Gautier Dagoty)に関するサイト。ダゴティの解剖図については、バーバラ・マリア・スタフォード(Barbara Maria Stafford)のBody Criticism(Cambr…

明治期におけるナショナル・アート・ヒストリーの樹立

文化財概念の成立 1871:町田久成ら、「古器旧物」の保存を訴える太政官宛の献言書。「集古館」設立構想。 →「古器旧物保存方」 寺社財産の捕捉とウィーン万博出品の目的。「文化財」概念によるものではない? 1872:博覧会場を恒久展示施設とする形で、集古…

montage collage assemblage

Wikipediaの記述より、フォトモンタージュ。

肖像画というトポス:似姿の振幅、そして不在者の肖似性の根拠

フィレンツェの商人たちにとって、なかでもとくに貴重だったのは、フランドルの画家たちの「強烈に迫り観察する注意力」によってもたらされた、寄進者とその肖像画との迫真的な類似性だった。奉納物の神秘的な力を信仰していたフィレンツェの人びとはいまだ…

nomi in cornice

画家の署名にまつわるアンソロジー "Revue de l'Art", No.26, 1974 フランスの美術史関係の学術雑誌。この号の特集は、"L'art de la signature(署名の技術)"。アンドレ・シャステル、アン=マリー・ルコック、ジャン=クロード・レーベンシュタインといった…

失われたオブジェを求めて

木下直之『世の途中から隠されていること――近代日本の記憶』晶文社、2002.(ISBN:4794965214) 諧謔の精神に富んだ、飄々としたエッセー集ながら、刺激的で鋭い指摘に満ちている。示唆的だと感じた箇所をいくつか。鍵概念は死者の記憶、肖像、「似ている」こ…

明治期日本の美術制度について 北澤憲昭『眼の神殿:「美術」受容史ノート』美術出版社、1989.(asin:4568201314) 北澤憲昭『境界の美術史 : 「美術」形成史ノート』ブリュッケ、2000.(asin:4434002147) 木下直之『美術という見世物:油絵茶屋の時代』平…

今日の美術史家:ジャン=バティスト=ルイ=ジョルジュ・セルー・ダジャンクール(Jean-Baptiste-Louis-George Seroux d'Agincourt,1730-1814) 近代的考古学の始祖とされるドイツの美術史家ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンの循環史的、様式史的なアプローチを…

明治期日本のオリエンタロ・オクシデンタリズム

内村鑑三の「地理學考」(1894=明治27年刊、1897年「地人論」に改題)を入手。岩波書店から出ている『内村鑑三全集』の第2巻収録のもの。 まだ全部には目を通していないが、日本の国土とギリシアの国土の形態的類似を説いた上で(列島と半島では、相当に違う…

近代日本のオリエンタロ=オクシデンタリズム

・井上章一『法隆寺への精神史』弘文堂、1994.(ISBN:4335550561) ・高階絵里加『異界の海――芳翠・清輝・天心における西洋』三好企画、2000.(ISBN:4938740370)明治20年代後半、条約改正と日清戦争を二大事件とするナショナリズムの時代は、「日本人」の…