2010-01-01から1年間の記事一覧

いつか見た散り行く花の残像

薄いヴェール

薄いヴェールは欲望を掻き立てる。女たちはすべてを拒みつつもすべてを受け入れる。まさしく薄布とは、神々の顕れなのである。というのも、薄布は快楽の源泉であり、快楽の糧なのだから。もっと言えば、薄布は建築芸術の後ろ盾であり、ときには、この芸術の…

マルキ・ド・サドはパリに閨房(boudoir)の建設を構想し、スケッチを残しているという(こちらのサイトの註16)。さて、このスケッチは何処で見られるのか……ひとまずフランス国立図書館のgalicaで検索してみたが、サドに関してはmanuscritやimageは収録され…

ルドゥーの同時代人サド(社会改革論者としての)

サドの『閨房哲学』(正確に訳すと「閨房の中の哲学」)読了。サドによる宗教観や社会観、その改革プログラムが、情熱的な長文で記述されている。『ソドム120日』も、構造的にはユートピア論であることも考え合わせると、サドはある意味では典型的な18世紀人…

考える皮膚 触覚文化論(増補新版)作者: 港千尋出版社/メーカー: 青土社発売日: 2010/03/20メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る初版刊行は1993年。新作と間違えて購入し、途中で違和感を覚えて確認したところ、大分前に書かれた…

18世紀と解剖学

また、人命を救うことは少なかったが、十八世紀の医学的実践には、独創的で立派な部門が一つあった。外科医は、「なぜ」かを知る必要がないという利点をもっていたのだ。彼らは肉体をデカルト的機械として考え、解剖によって肉体の接合部分を研究し、生体を…

『10+1』のサイトにて、バックナンバーがデータベース化されました。筆者名や固有名詞、キーワードでも検索できるシステムです。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/拙論もご収録いただきました。 http://tenplusone-db.inax.co.jp/backnumber/article/artic…

建築の保存・修復・復元が孕む諸問題

『建築雑誌』2010年1月号(特集:検証・三菱一號館再現) http://www.xknowledge.co.jp/book/detail/85551001 前半に収められた座談会と鼎談では、三菱一号館の「再現」が孕む問題(と可能性)が、多様な視点から明らかにされる。後半は、建築の「再現」を取…

観測史上最大と言われる降雪に見舞われた、1月のソウル滞在。街角で見かけた光景をアップロードしました。http://f.hatena.ne.jp/baby-alone/Seoul/ 主に故宮「景福宮」と南大門市場の写真。東京の風景も、少しずつアップしています。http://f.hatena.ne.jp/…

死と啓蒙―十八世紀フランスにおける死生観の変遷 (テオリア叢書)作者: ジョン・マクマナーズ,小西嘉幸出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1989/08メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る著者はイギリス人だが、アナール学派的な手法…

amazon.frに注文していた書籍が届く。 Thierry Mandoul, Entre raison et utopie : L'Histoire de l'architecture d'Auguste Choisy, Mardaga Editions, 2008. http://www.amazon.fr/dp/2870099509/ まだパラパラと捲ってみただけなのだが、一つ面白い図版を…

断片的思考を留めた覚え書き

monstreとはmixteな存在であるとフーコーはコレージュ・ド・フランス講義『異常者たち』の中で言っている。これは18世紀のmonstre概念と照らし合わせても、適切な規定だろう。しかしまた「畸形」は、移行段階に存在する中間形態という性質も持ち合わせている…

フランス革命と芸術―1789年 理性の標章 (叢書・ウニベルシタス)作者: ジャンスタロバンスキー,井上尭裕出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 1989/08/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る1789年の革命によって爆発的に顕…

テリー・ギリアム『Dr.パルナッサスの鏡』

タマラ・ド・レンピッカ展

シティダスト・コレクション―テクノロジーと空間神話作者: 彦坂裕出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1987/10/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る「都市の経験」という言葉を、私自身も割と安易に使ってしまうけれど、「今生…

Michel Le Moël, L'urbanisme parisien au siècle des Lumières, Action Artistique, 1997. http://www.amazon.fr/dp/2905118903/ フランス革命前後になると、「incendie(火災、戦火)」によって崩壊する建築を描いた絵画が登場する。アンシャン・レジーム…

アートフル・サイエンス―啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育作者: バーバラ・M.スタフォード,Barbara Maria Stafford,高山宏出版社/メーカー: 産業図書発売日: 1997/03/01メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (17件) を見る

三菱一号館も含む丸の内地区オフィスビルの「保存」や「復元」は、当該地区の「再開発」計画の一環であるらしい。再開発のための都市プロジェクト(=未来への企図)に、「古き良き時代」の空間や様式・意匠が援用されるという捩じれ。展覧会カタログ『一丁…

盗まれた手紙 (バベルの図書館 11)作者: E・A・ポー,ホルヘ・ルイス・ボルヘス,富士川義之出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1989/03メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見るレミ・ド・グールモンは「ユイスマンスはひとつの眼で…

一丁倫敦と丸の内スタイル―三菱一号館からはじまる丸の内の歴史と文化作者: 岡本哲史出版社/メーカー: 求龍堂発売日: 2009/09/09メディア: 大型本購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (3件) を見る思想としての日本近代建築作者: 八束はじめ出版社…

顔 (ナショナル・ギャラリー・ポケット・ガイド)作者: アレグザンダースタージス,Alexander Sturgis,田中純,小澤京子出版社/メーカー: ありな書房発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 55回この商品を含むブログ (4件) を見る好評発売中です…

宝島 (新潮文庫)作者: スティーヴンソン,佐々木直次郎,稲沢秀夫,Robert Louis Stevenson出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1951/04/03メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (15件) を見る孤島への冒険譚だが、伝統的なユートピア物とは…

ピュグマリオン効果―シミュラークルの歴史人類学作者: ヴィクトル・I.ストイキツァ,Victor I. Stoichita,松原知生出版社/メーカー: ありな書房発売日: 2006/06メディア: 単行本 クリック: 32回この商品を含むブログ (8件) を見る

街中で見つけた不思議な顔。 いわゆる「力士シール」のヴァリアントだろうか。神保町と銀座で発見したもの。よく見ると、宅配便に添付する伝票を再利用していることが分かる。追記)左と中央の写真にあるステッカーは、ESSU(satoxic)という人物によるものだ…

ブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション [DVD]出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ発売日: 2006/03/17メディア: DVD クリック: 19回この商品を含むブログ (131件) を見る誰かの幻想(妄想)によって構築されていた世界が、最後に劇的なカ…

廃墟とカタストロフィ

取り寄せて読んでいた雑誌の中で、自分の思考に突き刺さってきた一節。 TH no.39 カタストロフィー 〜セカイの終わりのワンダーランド (トーキングヘッズ叢書 第 39)作者: アトリエサード出版社/メーカー: 書苑新社発売日: 2009/07/30メディア: 単行本購入: …

地面や樹皮の下で蠢動する春の謀なのか、細切れの思考ばかりが次々に湧出しては消えてゆく。 たまたま目にした中島敦『山月記』の一節に、頭をはたかれるような衝撃を受けたので、自己の戒めのためにも抜き書いておく。 己の珠に非ざることを惧れるが故に、…

訳書が出ました。顔 (ナショナル・ギャラリー・ポケット・ガイド)作者: アレグザンダースタージス,Alexander Sturgis,田中純,小澤京子出版社/メーカー: ありな書房発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 55回この商品を含むブログ (4件) を見…

瞬間的廃墟

ルイ16世治世下(アンシャン・レジーム末期)のパリ改造についての記述を見つける。 http://www.paris.fr/portail/Culture/Portal.lut?page_id=6638&document_type_id=4&document_id=19851&portlet_id=15100&multileveldocument_sheet_id=2937 そもそもの発…