2004-01-01から1年間の記事一覧

BunkamuraのGalleryで開催中のハンス・ベルメール展に行ってきた。球体関節人形を写したモダン・プリントが殆どだが、エッチングやデカルコマニー作品、またベルメールが挿絵を手掛けた書籍(『眼球譚』や『マダム・エドワルダ』など)も展示されている。窃…

メゾン・エルメスのギャラリーで開催中の『幽霊たち ジョン・ケスラー+ポール・オースター展』に足を運んだ。オースターの小説『幽霊たち』に登場する人物やテーマを、インスタレーション作家ケスラーが組み立てた展示。床には色とりどりの色紙(いろがみ)…

六本木ヒルズ森美術館で開催中の『六本木クロッシング』に行って来た。なんと言っても、金曜・土曜・祝前日は24:00まで開館なのが嬉しい。展示の方は、前回の企画『ハピネス』展と同様、アミューズメント・パークのような娯楽性だ。「コンセプチュアル」だの…

ドキュメンタリー・ビデオをふたつ見る。インスタレーション作家である川俣正を取り上げた『KAWAMATA PROJECTS』(参考ページ)と、写真家カルティエ=ブレッソンを扱った『アンリ・カルティエ=ブレッソン――疑問符』。

リートフェルト展 府中市美術館 デ・ステイルにも参加していた家具デザイナー、リートフェルトの展覧会。単純な平面によって構成された作品は、一枚の板に還元できてしまう。なんとなく三宅一生のA-POC(a piece of cloth)を連想した。VAST FUTURE スーザン・…

山本政志『ロビンソンの庭』1987 植物に侵食されてゆく廃墟ビルと、狂気の病に冒されてゆく主人公が壮絶。うだるような真夏の光景と相俟って、奇妙な生命力とエネルギーに満ちている作品。ティム・バートン『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』1993 普通…

東京都現代美術館に行って来た。目当ては『球体関節人形展』。精緻な造形力に裏付けられた山本じんと、奇妙な無気味さをもつ井桁裕子の作品が印象に残る。前者(山本じん)は、皮膚を剥ぎ取られて筋肉組織が剥き出しになった解剖模型のような作品や、蝶とと…

今日も上映会のため横浜へ。印象に残ったのは、五島一浩『FADE into WHITE #2』(無彩色の強烈なコントラストと、機械仕掛けの人形自転車の奇妙な造型が美しい)、スタン・ブラッケージ『ドッグ・スター・マン プレリュード』(何かの接写のような不可思議な…

横浜美術館にて映画祭。午後のプログラムが、クェイ兄弟の『ストリート・オブ・クロコダイル』(いつ見ても秀逸なイメージ群。埃の積もったガラスのパサージュ空間がとりわけ美しい)、イジー・バルタの『手袋の失われた世界』(子供のころ、よく物を擬人化…

W.G.ゼーバルトの『アウステルリッツ』(鈴木仁子訳,白水社,2003)を読み始めた。まだ導入部だけなのだが、面白い。アントワープの駅に着いた語り手たる人物は、「なんとも言えぬ気分の悪さ」に襲われ、ベルギー滞在の間その悪心に付き纏われながら「ひどく…

「夜晩く鏡を覗くのは時によっては非常に怖ろしいものである。自分の顔がまるで知らない人の顔のように見えて来たり、眼が疲れてくる故か、じーっと見ているうちに醜悪な伎楽の腫れ面という面そっくりに見えて来たりする。さーっと鏡の中の顔が消えて、あぶ…

ICCギャラリーへ『FUTURE CINEMA』展を見に行く。ドイツのZKM(カールスルーエ・アート&メディアセンター)による企画の巡回展だという。空間や時間の知覚が撹乱されるのを楽しむ。

廃墟

「ロヴィニスモ」から9.11まで、廃墟を巡る言説は様々にあるが、つまるところ廃墟に自分が魅了されるのは、本来無機的であるはずのものが逆説的に纏ってしまう有機性の故だと思う。ところどころに染みや剥落を見せる壁は、年老いた生き物の皮膚のようで、暴…

渋谷に用事があったので、そのついでに松涛美術館まで足を伸ばし、『谷中安規の夢』展を見る。最近は田中恭吉や恩地孝四郎、そして今回の安規など、日本近代の「マイナーアーチスト」がとみに面白い気がするのだ。 木版画の太く濃い輪郭線、圧倒的な黒。(そ…

『沈黙博物館』小川洋子著、筑摩書房、2000. 「もの」が喚起する死者に纏わる記憶/忘却(死者が二度死ぬということ)/死者について、また自らの記憶について語るということ/記憶を留める場であり、かつ未来の記憶を創出すべき場としてのミュージアム、などと…

『ヨハネス・イッテン造形芸術への道』

「主観的色彩」という概念、また色彩や輪郭は「差異」によって知覚されるという理論が面白い。フランスの芸術学者ティエリー・ド・デューヴは、ドローネー夫妻らの抽象絵画の背後にあるシュヴルールの色彩理論(「色彩の同時性」)が、ソシュールの言語学・…

『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』

7人の監督によるオムニバス。ヴィクトル・エリセの作品が出色。ビデオ『パリ・テキサス』ヴィム・ベンダースビデオ『鏡』アンドレイ・タルコフスキービデオ『ドン・ファン他短編集』ヤン・シュヴァンクマイエル

日比谷のシャンテ・シネへ行き、『10ミニッツ・オールダー イデアの森』を見る。 8人の監督によるオムニバス映画。テーマがテーマだけに、「時間」に纏わる思索を(直球で)追求した作品が並んだ中で、移民問題――自己と、自己の領域内に入ってくる他者の問題…

少し前のことになるが、書くのを失念していたので。F.カフカの『城』を読了。「中間」の過程が延々と遅延したまま――どの道程を辿っても辿り着けない城だとか、配達されない手紙だとか、到着しない使者だとか――、物語は突然中断してしまう。(作者側の事情…

以前にクリスチャン・ボルタンスキーのことを、映画『アメリ』に出てくる、捨てられたインスタント肖像写真を集めている男の子を連想させるという風に書いたけれど、例の映画には別のモデルがいたらしい。ディック・ジュエル(Dick Jewell)という、主として…