『沈黙博物館』小川洋子著、筑摩書房、2000.
「もの」が喚起する死者に纏わる記憶/忘却(死者が二度死ぬということ)/死者について、また自らの記憶について語るということ/記憶を留める場であり、かつ未来の記憶を創出すべき場としてのミュージアム、などといったテーマ系に惹かれて購入したもの。『博士の愛した数式』の作者であったから大して期待はしていなかったのだが、予想通り(?)、せっかく面白いプロブレマティックを拾ってきたのに「料理」の仕方が稚拙で不十分の感あり。素人臭い文体と作品の世界観が調和していない印象もある。(別に擬古典調を信奉するわけではないが。)「老婆」にしても「少女」にしても、登場人物の造型がこれまた紋切り型。

ミュージアムの思想』松宮秀治著、白水社、2003.
「西欧近代の発明品」と一般的には解されてきた「ミュージアム」という制度・思想を、古典古代からの「蒐集」の伝統との連続性の中で読み解いていくもの。とりわけ絶対王政時代のヴンダーカンマー・クンストカンマーに関する、政治哲学的アプローチからの考察は面白い。(精神分析に関しては、悪意から誤読しているとしか思えない記述があるのだが。)