W.G.ゼーバルトの『アウステルリッツ』(鈴木仁子訳,白水社,2003)を読み始めた。まだ導入部だけなのだが、面白い。アントワープの駅に着いた語り手たる人物は、「なんとも言えぬ気分の悪さ」に襲われ、ベルギー滞在の間その悪心に付き纏われながら「ひどくおぼつかない足取りで市内を闇雲に歩きまわ」る。「小夜啼鳥通り」や「伽藍鳥通り」と名づけられた通りを通って、禽舎のある動物園へと至り、そこの鳥たちの顔貌に画家や哲学者の眼差しを見出す。(あたかもラファーターの観相学のように。)

街並みや通り、建築物(の一部)、ちょっとした小物などを写した写真が、ページのあちこちに挟まれている。
街を彷徨うというテーマといい、どこかブルトンの『ナジャ』を連想させる書き出しだ。