東京都現代美術館に行って来た。

目当ては『球体関節人形展』。精緻な造形力に裏付けられた山本じんと、奇妙な無気味さをもつ井桁裕子の作品が印象に残る。前者(山本じん)は、皮膚を剥ぎ取られて筋肉組織が剥き出しになった解剖模型のような作品や、蝶とともに巨大な標本箱に入れられた少女と少年の人形が、凄みのある美しさ。(「蝶のように、貝殻のように、捺花のように、人形のように、可憐な少女をガラス箱のなかにコレクションするのは万人の夢であろう。」澁澤龍彦『少女コレクション序説』より。)後者(井桁裕子)は、年老いた顔と成熟した性器をもつ新生児や、流産された畸形の胎児のような赤子が、とりわけ良かった。

時間があったので『MOTアニュアル2004』も観る。どれもコンセプチュアルで面白かったが、小瀬村真美のアニメーション作品(古典的な静物画の中の花と果物が、時間の経過と共に萎れ腐敗してゆく『薇――Sweet Scent』、ピサネロやピエロ・デッラ・フランチェスカらによる肖像画が、微かに瞬きしたり呟いたりする『氏の肖像』の二点)が個人的に気に入ってしまった。

常設展も観る。展示品が前回とかなり入れ替わっており、目当てのボルタンスキー作品がなかったのは残念。どう頑張っても展示品入れ替えのできない「サイト・スペシフィック」な作品群(ドナルド・ジャッドの、壁に貼り付けた箱だとか)に、軽い笑いを覚えた。