2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

大学図書館の書架でA la recherche de la méloire (著者はDaniel L. Schacter, De Boeck Université, 1999.)という本を見つけ、タイトルに引かれて手に取ってみた。ふと表紙に記された「traduction de la 1re édition américaine」の一文に目が止まる。「米…

ビアンセアンス

bienséanceは建築の適合性を巡る(白井氏の整理によれば17世紀的な)概念であって、アンシャン・レジームの身分制とも絡み合っている(=依頼者の社会階層に適した外観を、いかにして建築に与えるかという問い)。 この仏語は「ビアンセアンス」とカタカナ表…

怪物と化す装飾

J.F.ブロンデルは「怪物のごとき作品」を生ぜしめるとして、「従来の様式と古代、ゴシックと当世風、重厚なものと繊細なものとを無理に組み合わせた」装飾意匠を糾弾する。カトルメール・ド・カンシーもまた、ルドゥーによるパリの徴税市門のにおける、過剰…

「性格」と「語る建築」 

ジャック=フランソワ・ブロンデル(ブレー、ルドゥーの師) 個別主義に対する要求は、新しく起こりつつあった、性格を求める動きと密接な関連があった。そしてブロンデルは、ひとつの構造物の性格を表現することができるためには、とりわけ、その構造物の特…

caractère概念の外延について

The Expression of the Passions: The Origin and Influence of Charles Le Brun`s "Conference sur l`expression generale et particuliere"作者: Dr. Jennifer Montagu出版社/メーカー: Yale University Press発売日: 1994/09/10メディア: ハードカバー ク…

パンテオン(パリ)の断面図に、ローマの半円形劇場と相似の形態を見つけてしまった。 ヴィトルヴィウスの仏訳(1673年刊行、クロード・ペローによる)以来、劇場をはじめ、あらゆる建築空間に好んで使われるようになった形態。ディジョンの大公宮殿前のリベ…

女性の身体という場について

魔女と聖女 ヨーロッパ中・近世の女たち (講談社現代新書)作者: 池上俊一出版社/メーカー: 講談社発売日: 1992/11/17メディア: 新書購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (18件) を見る

昼と夜のガスパール

1月6日は公現祭(épiphanie)。カトリックの教義では、東方三博士の礼拝が行われた日である。この日はgalette des rois(王様の焼き菓子)を食べるのがフランスでの慣わし。この焼き菓子の中には、フェーヴと呼ばれる小さな陶器製の人形やミニチュアが入っ…

語る建築(l'architecture parlante)

Ledoux était partisan de ce qu’on a appelé depuis l’architecture parlante ; il croyait avoir trouvé une merveille en faisant la maison d’un vigneron en forme de tonneau ; il eût sans doute fait celle d’un buveur en bouteille, etc. Ce systè…

バルセロナ現代美術館(MACBA)

1ヶ月半くらい間が空いてしまったが、バルセロナレポートの続き。 ミニマルな近代建築は、無機的で冷たく、自分の身体に馴染まないという印象を受けることが多い。しかし、リチャード・マイヤー設計のこの美術館は、モダンなホワイトキューブながら、壁の白…

思考の屑篭

2. 1. 造物主と太陽光線ルドゥーによる建築構想の中で最も広く知られているのが、『建築論』に収められた「ショーの都市」の計画図であろう。一人の旅行者に仮託された語り手ルドゥーの視線は、この理想都市に置かれた建築物を順繰りに辿っていく。それは現…

conception

新年に初詣代わりに教会巡りをした。これはノートル・ダム教会で見つけた、一種のおみくじ。受胎告知の一節(聖ルカ福音書)が記されている。concevoirは「着想を得る」の意味もあるし、幸先良さそう。 左:サン・ミシェル教会 中央:ノートル・ダムのジャッ…

リリー・マルレーンの歌詞が似合いそうな街灯。石を積んだ城壁は、確か中世まで遡る古いもの。

ニュートン主義とピラネージ

B.M. Stafford, "Bare versus Prismatic Style : Newton, Piranesi and eighteenth-Century Theories of Abstraction in Art and Science", F. Burwick & J. Klein eds., The Romantic Imagination : Literature and Art in England and Germany, Amsterdam …

思考の屑篭

建築の起源について 建築の根源ないし原理を、ヴィドラーは「ソロモンの神殿」と「アダムの家」の二項に大別している。すなわち、神の力による建造物という象徴的・フリーメイソン的な発想と、自然の力に基づく原始の小屋という唯物論的な思考の二種である。…

「思春期」という文化現象

そして繃帯と言えば、華宵の描く少年や少女の中には、手足や指などに純白の繃帯を巻いたのがよくあった。母などに訊くと、大正から昭和のはじめにかけて若い男女の間に、傷もないのに指に繃帯を巻きつけるのが流行ったという。その当時の華宵人気を物語る、…

聴覚と触覚

それらの話や会話は、耳の聴覚で聞くよりは、何かの或る柔らかゐ触覚で、手触りに意味を探るといふやふな趣きだつた。とりわけ女の人の声には、どこか皮膚の表面を撫でるやうな、甘美でうつとりとした魅力があつた。すべての物象と人物とが、影のやうに往来…

いろいろな断片。