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こちらに書いた、バルザックによる古道具屋の描写に呼応するものとして、フローベールによる骨董屋。
彼らは骨董店の並んだあたりをぶらついた。また、工芸学校、サン=ドゥニ寺院、国営ゴブラン織工場、廃兵院(アンヴァリード)、その他あらゆる公開のコレクションを見てまわった。
自然史博物館の陳列室に入った彼らは、剥製の四足獣の前では驚嘆し、蝶の前では嬉しがったが、金属の前はまるで無関心な顔で通りすぎた。化石を見ると夢にいざなわれたが、貝殻には退屈した。またガラス越しに温室のなかを見まわして、これらのすべての葉の茂みが毒を発散しているのかと考えて、ぶるっと身ぶるいした。西洋杉の大木について驚いたことは、はじめ誰かがこれを帽子のなかに入れてもってきたということだった。
ルーブル美術館では、彼らはラファエロの画に熱中しようとつとめた。国立図書館では、蔵書の正確な数を知りたがった。
(フローベール「ブヴァールとペキュシェ」『フローベール全集第5巻』新庄嘉章訳、筑摩書房、1966年)