アメリカ2

文化的統一を求めたアメリカのユートピアニスムが、[独立直後の記念メダル図像や「自由の女神像」におけるギリシア女神、ジェファーソンのパッラーディオ主義、ワシントン都市計画やアメリカ第二銀行の新古典主義など]ヨーロッパのアレゴリーと古典主義的形式によって自由とデモクラシーの象徴をつくりだし、それらが銀行の建築や証書の縁飾りに繰り返され、日常化していたことは、西欧の文化にとって、古典主義が、どれほど根強い語法であるかを推察するに足りる出来事なのである。それはただの美徳の擬人化やギリシア・ローマの建築の様式の応用といった手法以上に、神話を語りうる詩的能力のひとつの政治的形式化として西欧世界にあらわれていたものではなかったろうか。ジェファーソンらの仕事は、こうしたヨーロッパで定式化された政治の言語をそっくり移入することで、新しい社会を統合する手段たらしめようとしたことであった。
多木浩二『目の隠喩――視線の現象学――(新版)』青土社、2002年(旧版1982年)、37-38ページ。)