卒業生と新入生に送りたい言葉

夜のなかを歩みとおすときに助けになるものは橋でも翼でもなく、友の足音だ、ということを、ぼくは身にしみて経験している。ぼくらは夜のさなかにいる。

ヴァルター・ベンヤミンヴァルター・ベンヤミン著作集14 書簡1』野村修編集解説、晶文社、1972年、76-77ページ。 )

 

周辺性という状態は、無責任で軽佻浮薄なものとみられがちだが、しかし周辺性はまた、ふだんの生活や仕事において、たえず他人の顔色をうかがいながらことをすすめたり和を乱さないかと心配したり同じ集団の仲間に迷惑をかけないよう気を配る生きかたから、あなた自身を解放してくれる。[…]わたしがいいたいのは、知識人が、現実の亡命者と同じように、あくまでも周辺的存在でありつづけ飼い馴らされないでいることは、とりもなおさず知識人が君主よりも旅人の声に鋭敏に耳を傾けることであり、慣習的なものより一時的であやういものに鋭敏に反応することであり、上から権威づけられてあたえられた現状よりも、革新と実験のほうに心をひらくことなのだ。漂泊の[傍点]知識人が反応するのは、因習的なもののロジックではなくて、果敢に試みること、変化を代表すること、動きつづけること、けっして立ち止まらないことなのである。
エドワード・W・サイード『知識人とは何か』大橋洋一訳、平凡社ライブラリー、1998年、109-110ページ。)