ニュー・アトランティス (岩波文庫)

ニュー・アトランティス (岩波文庫)

ニュー・アトランティスフランシス・ベーコン、1627年)
形状:遭難によって辿り着いた未知の陸地ベンサレム。「旧世界からも新世界からもはるかに遠く」隔たった孤島である。架空の古代文明において、繋留地として栄える。当時栄華を誇った大アトランティスアメリカ大陸)は、「傲慢」に対する神罰として洪水に見舞われ衰退、ベンサレムと他国との交流も途絶えたという設定。

語り:「私」に向かって、ベンサレム国の住民がその歴史や制度について語る。本文の大半を会話文(相手の叙述)が占める。

趣旨:ベーコン理想の国家制度と教育制度を、ベンサレム国とその中心にある「サロモンの学院」に仮託して述べる。未完の著。

その他特徴的な点:

  • ベンサレムの国民は、「私たち」と言語(古代ギリシア語、古代ヘブライ語、公用ラテン語スペイン語)と宗教(キリスト教)を共有している。ベンサレムは、西欧文明にとっての「他者」ではなく、むしろ「本来の姿」そして「将来あるべき規範」として描かれている。
  • サロモン(ソロモン)という言葉への拘り。
  • 薔薇十字団との関わり(フランシス・イエイツによるエンブレム研究)。
  • 「サロモンの学院」のヴンダーカンマー的な描写。錬金術や博物誌、無から有象を人造する技術、永久運動機関など。