太陽の都 (岩波文庫)

太陽の都 (岩波文庫)

太陽の都(トンマーゾ・カンパネッラ、1602年、イタリア語原典最終稿は、あとがきによると1611年)
形状:世界一周の後に辿り着いた「タプロバーナ島」(おそらくスマトラ島を指すと註にある)の、平原に聳える丘の上に築造されている。幾重もの城壁によって外界と隔てられ保護された、幾何学形態の城塞都市。七惑星に因んで名づけられた七つの環状地区に分割されている。この都市の諸形態は、星座との照応関係を持つ。

都はひじょうに大きな七つの環状地区に分けられ、それぞれに七つの惑星にちなんだ名前が付いています。これらの地区に出入りするのには、東西南北四つの門を通ります。都はこのようにできていますので、いちばん外側の第一の環状地区を攻略しても、第二の地区を攻略するにはさらに苦労をせねばならず、第三、第四と、ますます苦労が大きくなります。こうして、都全体を征服するには、七回も攻略をくりかえさねばなりません。しかし私の思いますには、第一の地区を攻略するのでさえむずかしいでしょうよ。城壁は、大量の土を盛って要塞化した巨大なもので、砦、塔、砲台をそなえ、外側には堀がめぐらされているのです。

語り:ヨハネ騎士修道会の騎士に請われ、客人であるジェノヴァ人(コロンブスと同船した航海士)が自らの見聞を語る、対話構造のテクスト。

趣旨:正規の書題は、『政治学の補遺 太陽の都 詩的対話』。都市の理想的形態、制度、慣習についての提言。

その他特徴的な点:

  • 諸活動に関する厳密な規則と集中的管理のシステムが張り巡らされている(結婚、性交、労働、教育、衣服など)。これは、ほとんどの「ユートピア」論に共通する特徴でもある。
  • 私欲の否定。人間の諸活動(労働のみならず生殖行為に至るまで)は「公共善」を目的として行われる。
  • 「結婚」の神聖化。
  • 精神修養のための時間としての「余暇」。
  • 原始共産制、労働の平等な分担、奴隷制の否定、労働行為の神聖化。財産(生殖行為のための女性までも)の共有制。
  • 占星術的世界観の支配、千年王国信仰。

訳者(近藤恒一)あとがきより、ユートピアの系譜について