都会のアリスヴィム・ヴェンダース監督、1974年
はじめは何も写らない、そして浮かび上がる映像も結局は「見たものとは違う」ポラロイド写真、望遠鏡越しに覗き見られるニューヨークの光景、映画の画面の中で絶え間なくトラッキングするテレビ、空港内でアリスが覗き込むパノラマのような視覚装置、そして車窓越しに流れる風景。枠で切り取られ制限された、不自由な視覚性しかもたらさないメタ・イメージの数々。
(途中で、まさに「写真通りの」家が出てくるのだけれど、主人公とその同行者の少女の探し人は、その家にはもはや住んでいないのだ。写真はここでも、事実を裏切る。)

ところで、「絵画内空間」とは言うけれど(そして、おそらく「写真内の空間」と言っても意味は通じるだろうけれど)、「映画内空間」とは言わないですね。三次元のイリュージョンを持った平面上のイメージだということには、変わりはないのに。