首都大学東京2014年後期「イメージの理論」シラバス
■授業方針・テーマ
前期講義「美術史の方法論」で紹介した伝統的なアプローチ以後の、比較的「新しい」方法論としてのイメージ分析を中心に扱う。
「イメージ」という言葉は多義的だが、ここではおおまかに「眼に映る像」や「意識に浮かぶ像(心像)」ととらえておきたい。つまり、視覚的に把握できる、ないしは視覚的なものとして再現される像一般である(それは実体をもつことも、幻影のようなものである場合もある)。
Cf. イメージとは:paintings, prints, photographs, film, television, video, advertisements, news images, the Internet, digital images, and science images
(Marita Sturken & Lisa Cartwright, Practices of Looking: An Introduction to Visual Culture (2nd ed.), Oxford University Press, 2009の版元による紹介文よりhttp://ukcatalogue.oup.com/product/9780195314403.do

絵画や彫像、写真のような静止した視覚芸術ばかりではなく、運動性や時間性を含んだイメージ、また「芸術作品」とは見なされないような日常的な映像(広告、報道、TVやインターネット上の諸イメージなど)、また記憶の想起や心理的なフラッシュ・バックによる心的イメージなども視野に入れ、「視覚的なもの」の対立項として「盲目性」や「通常の視覚性を超える何か」も取り上げる。具体的な「イメージ」に立脚しつつ、上記のような「イメージ」を思考するための基礎的な道具・装置として、どのような理論があるのか、またありうるのかを提示する。具体的な固有名詞としては、ドゥルーズやディディ=ユベルマン、ストイキツァらの「イメージを分析するための理論」を紹介する予定である。


■習得できる知識・能力や授業の目的・到達目標
表象文化論、視覚文化論、イメージ分析と称されている領野での、基礎的な理論、概念、固有名詞と文献をおさえ、理解する。学生自身が分析・考察・研究を行なう際の基盤や補助線になるような知識体系を身につける。


■テキスト・参考書等
・毎回一つの「基礎文献」(単行本であれば1〜2章程度)を事前に指示する(PDF化したものをDropboxの共有フォルダに入れておく)ので、該当講義回までに読んでおくこと。
・発展的な文献については、毎回の講義時に適宜指示する。
☆総論的に「イメージ分析」の方法論やその流れを辿れる文献として:
ジョン・A.ウォーカー、サラ・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門』岸文和他訳、晃洋書房、2001年。


■授業計画・内容(文献は変更の可能性あり)
1(10/2)講義ガイダンス
2(10/9)新しい美術史学の動向1:視覚文化論
・ジョナサン・クレーリー『観察者の系譜 視覚空間の変容とモダニティ』遠藤知巳訳、以文社、2005年。
3(10/16)新しい美術史学の動向2:表象の空間/空間の表象
ミシェル・フーコー『言葉と物』渡辺一民佐々木明訳、新潮社、1974年。
4(10/23)空間のイメージ1:遠近法と空間表象
・エルヴィン・パノフスキー『〈象徴形式〉としての遠近法』木田元他訳、ちくま学芸文庫、2009年。
ジャック・ラカンアナモルフォーズ」『精神分析の四基本概念』小出浩之他訳、岩波書店、2000年。
5(10/30)空間のイメージ2:空間の入れ子構造とメタ・イメージ
・ヴィクトル・I.ストイキツァ『絵画の自意識』岡田温司他訳、ありな書房、2001年。
ジャック・デリダ『絵画における真理』上下巻、高橋允昭・阿部宏慈訳、法政大学出版局、初版1997-98年(新装版2012年)。
6(11/6)身体のイメージ1:解剖学と可視化への欲望
・バーバラ・M.スタフォード『ボディ・クリティシズム 啓蒙時代のアートと医学における見えざるもののイメージ化』高山宏訳、国書刊行会、2006年。
7(11/13)身体のイメージ2:支持体のメタファーとしての皮膚と布
・谷川渥『鏡と皮膚』ちくま学芸文庫、2001年(仮)
8(11/20)身体のイメージ3:痕跡、刻印、インデックス
ロザリンド・クラウス『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』小西信之訳、リブロポート、1994年。
9(11/27)時間のイメージ1:写真を語る言葉
ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」浅井健二郎・久保哲司訳、『ベンヤミン・コレクション?近代の意味』(第2版)、ちくま学芸文庫、2002年。
ロラン・バルト『明るい部屋』新装版、花輪光訳、みすず書房、1997年。
10(12/4)時間のイメージ2: カタストロフィと表象不可能性をめぐって
・ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『イメージ、それでもなお』橋本一径訳、平凡社、2006年。
11(12/11)運動のイメージ1:動画(motion pictures)についての理論――映画について?
・動画とメディウムについて
12(12/18)運動のイメージ2:動画(motion pictures)についての理論――映画について?
ジル・ドゥルーズ『シネマ1:運動イメージ』、『シネマ2:時間イメージ』
13(1/8)運動のイメージ3:動画(motion pictures)についての理論――アニメーションについて
・トーマス・ラマール『アニメ・マシーン』藤木秀朗他訳、名古屋大学出版会、2013年。
14(1/15)盲目性について
ジャック・デリダ『盲者の記憶 自画像およびその他の廃墟』鵜飼哲訳、みすず書房、1998年。
15(1/29)期末試験と解説
(※1/22は英語クラス編成試験のため休講)