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『プラーグの大学生(Der Student von Prag)』シュテラン・ライ監督、1913年。
美しい伯爵令嬢を手に入れるため、大金と引き換えに鏡像を売り渡した青年が、不意に姿を現す自らの鏡像/分身によって破滅に至る物語。金銭と交換に悪魔に自らの分身を売り渡すという筋書きは、シャミッソーの『影をなくした男』を、分身を殺したつもりが自らも死に至るという結末は、ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』を想起させるし、ドッペルゲンガーが青年の無意識下の欲望を実現してしまう点では、超自我の現われとしての分身を描いたポーの『ウィリアム・ウィルソン』と、対偶的な関係にあるだろう。(分身が鏡から抜け出すという点では、自身が鏡の中へと入っていく『不思議の国のアリス』やコクトーによる映画『オルフェ』とも、対偶をなしているかもしれない。)
主人公ボードウィン(バルドゥイーン)の鏡像が大きな姿見の中から抜け出し、部屋の外へと歩み去って行く場面は、当時としては趣向を凝らした撮影技術によるものだったのだそうだ。ボードウィンと伯爵令嬢が逢引する墓地の、様々な字体の墓碑銘が立ち並ぶ空間構成も面白い。
ストーリーそのものは怪奇的かつ悲劇的だが、この時期の映画特有のちゃかちゃかした人物の動き(まるで操り人形の踊りみたいだ)と能天気な音楽の所為か、全編を通してどこかコミカルな雰囲気が漂うフィルムだった。
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