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日曜日、迷える自律神経たちをなだめながら、町田市立国際版画美術館で開催中の「空想の建築 ピラネージから野又穫」展へ。
2000年前後に、この手の「紙上建築」や「ヴァーチュアル・アーキテクチャー」を語る言説が溢れかえったこともあり(「未来都市の考古学」展や、『InterCommunications』の「ヴァーチュアル・アーキテクチャー」特集号など)、既視感の強い展示ばかりなのかな、と思いつつ出掛けたが、想像以上に楽しめた。
実際の建築物は巨大すぎて「散漫な受容」(ベンヤミン)になってしまいがちだが、二次元平面内に縮小することで、それは容易に視覚的に把握可能なものとなる。いわば「掌の上の建築」。
ナポレオンがエジプト遠征した際に作られた版画集を見ていると、エッチングやエングレーヴィング(モノクロームの「線」による造形表現)では、「影」の存在感が三次元性や凹凸、質感のイリュージョンを喚起するのに重要な役割を担っていることに気づく。
ビビエナ一族やルドゥの建築書も出品されているが、当然ながらこういう場では見開き2ページ分しか展示することができない。「書物」というメディアにあっては、「ページを捲る」という、身体を伴った主体的関与が不可欠のものであることを再確認させられる。
この手の「紙上建築」ではお馴染みの、カール・フリードリヒ・シンケルによる舞台背景画(『魔笛』)も展示されていた。一度本気でこの美術を再現した舞台を見てみたい。
ジョン・マーティンやエリック・デマジエールなど、初めて知る「紙上建築」の画家もいて、出掛けるだけの意義はある展覧会だった。