今日が最終日だったヴァニラ画廊の「オリエント工業 人造乙女博覧会IV」へ。


会場で気付いたのは、まず「ラヴ・ドール」たちが妙に曖昧な表情をしているということ(ラ・スペコラの解剖学のヴィーナスなどを連想した)。人形の保有者が、あらゆる感情や意味を投影的に見出せるように、ということなのだろうか。


また、ヴァニラ画廊という方向性や性質の明確なギャラリー(分かりやすく言えばアングラ+お耽美)で敢えて展示会をやるからには、あらかじめ狙った方向性(アート志向、女性への訴求)なのだろうが、ラヴ・ドールという対象が喚起するであろうもっとも剣呑な部分が巧妙に覆い隠されて、なんだか「BMI21の恋月姫」みたいな雰囲気の展示に。具体的には、相当な技術開発を行なっているであろう性器部分と陰毛部分は徹底的に隠されている(植毛場面は動画で見られたが)。それはレースのショーツやイマドキの若い子風のスカートで物理的に隠されると同時に、「少女コレクションとしての人形愛」風のインスタレーションによって、意味的にも隠蔽されている。


身体各部に分解された、錆び付いた金属製の型の展示もあったが、それがいちばんエロティックだったようにも思う。それはともかく、あからさまに「アート」の文脈に置くこと、「これはアート(ないしは芸術)なんです」と主張・抗弁することで無害化や漂白がなされ、隠蔽されてしまうもの、零れ落ちてしまうものもあるのではないかと、最近「芸術と猥褻」事案が頻発していることもあり、考えさせられた。