persona←→decorum←→apparatus

マウリツィオ・ベッティーニ氏の講演会「ウェルトゥムヌス――多くのアイデンティティをもつローマ神」に赴く。以下はそのメモ。

ウェルトゥムヌス(「変化する」が語源)
①神話の登場人物=寓話(fabula)
②彫像
③神
エトルリア起源であり、ローマに辿り着く。
作物、四季の変遷、「変身」にまつわる技芸の神

①ウェルトゥムヌス(神話の登場人物としての)
似姿(imago)を完璧に纏う、変身する誘惑者
似姿imagines、外見formae、形姿figurae、衣装instrumentaの交錯:人間・社会の領域に留まる変身
c.f.動物に姿を変えるユピテル、元素にまで変化するプロメテウス

②彫像としての
万物に変形するvert in omis
「ふさわしくなってみせようdecorus ero」
彫像としてのウェルトゥムヌスもまた、「社会に関わる」変身を見せる
ローマ市民civitasを内包する範疇の内側の存在
共同体内における役割の複数性を横断
複数のキヴィタスのアイデンティティを領有(処世術の名手)
彫像としてのウェルトゥムヌス=別の神に変形する能力をも持つ
c.f.モルペウス:ペルソナの正確なアイデンティティや名前を用い、「個人」を模倣する
ウェルトゥムヌス:「社会的役割」(漁師、娘……)を演じる

③神としての
ローマ王プリスクス:「気まぐれinaequalis/移り気な気質inaequalitas」好意的でないウェルトゥムヌスによって与えられた性格←複数性
c.f.古代神は常に複数性を潜在させた存在(一つのペルソナではなく、単数形でも複数形でもたいした違いはない)
社会の中の両極的な存在に身をやつす(指環、住居、チュニカの帯といった社会的コードによって)
=常に「他の誰か」であることを強いられる

「変わりやすさ」
古代ローマでは、ウェルトゥムヌスが出来事を「転じてくれるvertere」と信じられていた
=出来事の流れの変わりやすさを表象

☆相応しい(decere)神としての
ウェルトゥムヌスの本性:神の彫像を受け継ぎ、あらゆる姿形をとるのに相応しい(opportuna)なものとして提示される
e.g.娘の衣装、トーガ……相応しい姿になってみせよう(decorus ero)
→適正さ・優美さ(decorus, decenter)の領域で活動する神
ティブルス(詩人)「ウェルトゥムヌスもまた、無数の装飾品(ornatus)を身に着け、その全てが似合って優美(decenter habet)」
オウィディウス:神は無数の形状(formae)をとり、その変身は常に適切かつ順当
ここでウェルトゥヌスは「秩序」のイメージで現れる
神は常にdecorusなものとして顕現。適切で順当なやり方で様々な外見を帯びることで、そのペルソナの周囲で活動する全てが、decenterの領域に置かれる

formae:ウェルトゥムヌスに関しては、身体的外見・外観のこと=figura, facies, species(ウィルギリウスの用いるformaeとは異なる)
metamorphose

c.f.contra-radici(根に抗して):偏狭な「アイデンティティ」を脱臼する