国立新美術館アンドレア・グルスキー展(http://gursky.jp/)とアメリカン・ポップ・アート展(http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/index.html)へ。


グルスキー展はartscapeに掲載された展評(http://artscape.jp/focus/10089290_1635.html)を読んで楽しみにしていたのだが、作品を見ると意外と了解可能性の範囲に収まってしまっていて、少し拍子抜けする。
写真を加工することで、線遠近法も空気遠近法も存在しない――画面の隅々までクリアにピントが合っており、距離による縮減も、広角レンズ使用がもたらす歪形も無い――広大な視界を体現した作品が並ぶ。
それは間違いなく写真作品なのだが、肉眼が捉える像とも、広角レンズが捉えた写真とも異なっており、従来的な「視界」の約定を、徹底的に「リアル」であるにも関わらず微細な端部が裏切るという趣向である。


ただ、「崇高」という言葉から期待していたものよりは色々な意味で小規模だったため、「Photoshop芸」と言ってしまえばそれで終ってしまう感もあり。


個々の作品の詳しい解説や、グルスキーの制作プロセスの説明――とりわけ、どこまでが実景でどこからが加工なのか、具体的にどのような人為的操作が施されているのか――が、会場の説明パネルにはもちろん、展覧会カタログに収録された論文でも言及されておらず、消化不良気味。
「作品のコンセプトやコンテクストの説明/解釈」も含めて「鑑賞」の対象となるタイプの作家だと思うのだが……
制作の「ネタばらし」をグルスキー本人が禁じているなど、何か事情があるのかもしれないが。


アメリカン・ポップ・アート展の方は、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻の個人コレクションが母体ながら、品揃えが充実しており、ポップ・アートの主要な作家とその作品、全体の展開をきっちり押さえることのできる展示構成だった。
ラウシェンバーグなどは、名前は有名ながらその平面作品はあまり見たことがなかったので、良い機会となった。


ちなみにグルスキーの《99セント》という作品には、ジェイソン(『13日の金曜日』)風のお面を被った奇妙な人物が隠れている。(99セントショップに潜入した強盗予備軍を、たまたまレンズが捉えてしまった?)