東急Bunkamuraで開催中のクライドルフ展(http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf.html)へ。小さな花や昆虫たちが擬人化されて、彼らなりの小さな世界で、様々な儀礼や社交を繰り広げつつ生きている。いつの間にか自分自身を追放してしまった幻想の王国に再び身を浸す。
子供の頃の世界は素朴なアミニズムや「見立て」に満たされていた。小さな生き物たちはもちろん、スプーンにもテーブルの脚にも生命があって、盛りあがった白い布団が雪山になったりした。眠りに落ちる数十分の間、枕元で見えない精霊たちと魍魎たちが円舞していた。

  

実家の庭先には金柑の木があって、晩春から夏にかけては揚羽蝶の幼虫のゆりかごとなっていた。黄緑色に一筋サイケデリックな眼状紋の入った幼虫は子供の良い遊び相手で、いつも飼育しては蝶に羽化した成体を空に帰していた。その頃、アゲハチョウは王女、薄緑がかった紋白蝶は小妖精、紋黄蝶はその中でもちょっと変わっている子、裏庭の山椒にやってくる黒揚羽蝶は黒い騎士、石に同化しつつ日向ぼっこをするしじみ蝶は知恵もののおばあさん、たまに飛来するアオスジアゲハは瑠璃色の衣装を纏った貴公子だった。
クライドルフの絵本は、夢の国から数十年の遅延を経て届いた、懐かしい便りのようである。


このあたりはまだ「著作権」や「独創性」の概念はなかったようで、いくつかグランヴィルを連想させる作品も。クライドルフは専ら植物や昆虫を擬人化したが、半世紀前のフランスに生きたグランヴィルとなると無生物の商品/道具まで擬人化してしまうわけで、両者の想像力の性質にはかなり大きな違いがあるはず。