ドレスデン国立美術館展「世界の鏡」(国立西洋美術館にて、9月19日まで)
ドレスデン宮廷のクンストカンマーの生成史と内容を辿れる展覧会。当時の科学技術と結びついた機会仕掛け(天球儀やコンパス、集光器、時計など)、オスマン・トルコや中国・日本といった東方から渡来してきた工芸品(日本や中国の陶器と、それを模倣したマイセン焼との比較が面白い)、そしてイタリアやオランダの美術の受容など。

ともすれば名品を並べるだけで散逸した印象になりがちな「美術館展」だが、本展は明確なテーマを設定して分節化することで、ザクセン公国と諸外国との文化交流や、クンストカンマーにおける知のシステムを浮き上がらせることに成功していると思う。

ちなみに、ドメニコ・レンプス作と言われているトロンプ・ルイユ『キャビネ・ド・キュリオジテ』に登場するのとよく似たオブジェ(象牙製の『肖像画入りの球』や珊瑚の枝など)が出品されている。オブジェや昔の科学機器にフェティシズムを感じる向きには、純粋に(動物的に?)楽しめる展覧会であろう。