デレク・ジャーマンの『カラヴァッジオ』を観る。絵画制作の過程をカメラで捉えた、一種のメタ絵画映画だ。カラヴァッジョ作品を既知のものとする眼には、絵画モデルとして登場する人物群像が、むしろ活人画として見えてしまうという倒錯。画布という表層上をなぞる絵筆と、皮膚を切り裂き内部を噴出させるナイフとの、また絵画(とりわけ色彩)という視覚的なものと、触覚に纏わるテーマとの、二項対立の戯れが面白い。自身もゲイであったジャーマンは、カラヴァッジョの生涯をかなりホモエロティックなものとして描き出している。

ビデオを観た勢いで、Amazonに『カラヴァッジョ鑑』を注文。目次を見ると、「鏡」や「自画像」、さらには「セクシャリティ」の問題などが取り上げられているようで、なかなか興味深い。(ジャーマンのフィルムについても、篠原資明氏が触れている。)