ル・コルビュジェvsアルド・ロッシ展(サイト
新宿御苑のギャラリー&バー、and ZONEにて、9月15日まで。リトグラフと銅版画30点余りが展示されている。

展示数自体は少ないけれど、ギャラリー中央のテーブルではロッシやル・コルビュジェの作品集が自由に閲覧できるようになっていて、彼らの二次元作品の概要を知ることができた。

ル・コルビュジェが絵画作品を数多く手掛けていたことは、恥ずかしながら今回初めて知った。作風は、もうほとんどピカソ。時おり、ブラックだったりマティスだったりミロだったりのエッセンスが混入する感じ。ル・コルビュジェ絵画の収集を手掛けた夫妻は、ピカソマティスのコレクターだったというのも納得がいく。正直、彼の建築作品との共通点は無いように見える。ル・コルビュジェにとっての絵画と建築とは、まったく別の造型原理に基づくものだったのだろうか。彼は建築図面において、三原色の塗り分けで奥行き感覚を表す試みを行なっているが、そのような実験的手法と絵画で目指したものとが共振するのか否か、今ひとつよく分からない。

ロッシの作品は、比較的建築や都市のドローイングが多かったが、『朝のカフェ』のように室内と人物を描いたものもあり。こちらは、微かな不安感を醸し出す歪んだ遠近法と積み木細工のような建築物が、デ・キリコやカッラの形而上絵画を連想させる。ル・コルビュジェが露骨にピカソのフォロワーなのに対し、ロッシの方はまだ「独自の画風」があるようだけれど。コルビュジェとはこれまた対照的に、ロッシの描き出す空間は、その気になればその建築作品との通底性を指摘する(こじつける?)こともできそうだ。例えば、歴史的建造物からの部分的引用、ないしは古典主義的モティーフの簡素な形態への還元、中間色どうしの組み合わせなど。

モダニズムの建築家で、建築プランとはまた別次元で平面作品を残していて、さらに作品が比較的手に入りやすくて、という観点で「ル・コルビュジェ+ロッシ」なのだろうけれど、殊更に「vs」と二項対立にする理由がどこにあるのかはよく分からない。

ちなみに、展覧会を知らせるDMには、「建築家であり画家でもあった2人の版画は、合理性・機能性で語られるコルビジェの関心が実はフォルム自体にあったこと、歴史性で知られるロッシの関心が実は部分と全体の関係にあったことを教えてくれる」とある。