気になる本

Mike Kelley: The Uncanny (Art Catalogue)

昨年イギリスとドイツで行われた同名の展覧会のカタログ。屍体を連想させる作品や病理学標本などの「the uncanny（不気味なもの）」の他、「悪趣味（mauvais gout）」や「キッチュ」の問題系に連なりそうなオブジェ（芸術作品や商品）の数々が収められている。

戦争のかたち

1978年生まれのフォトグラファーが、全国の戦争遺跡を写したもの。半ば廃墟化した不思議な形態の構築物が、温度の低い眼差しで写し取られている。戦跡写真に付きまといがちなイデオロギー性や記録性は（おそらくは意図的に）捨象されており、むしろ今までに数多く出版されている廃墟写真の系譜に連なる作品集だろう。人為による暴力の記憶を宿した空間も、（少なくとも我われの世代にとっては）美的な鑑賞の対象へとしばしば横滑りしてしまうのだ。

キズアト

皺や傷痕という皮膚に印された時間の痕跡を、モノクロームで撮った写真集。人物の顔は写されず、身体の一部分だけが接写される。誰のものか分からないのに、それでいて非常に個性的な身体である。