strange eyesその4

19世紀末になっても、殺人の犠牲者の網膜に犯人の最後の像の痕跡が残っていると、まことしやかに信じられていて、動物実験が行われたり、犯罪捜査に利用されたり、推理小説に好んで取り上げられたりしていた。
岡田温司『キリストの身体』中公新書、2009年、253-254ページ。)

この疑似科学的言説のことは、本書で初めて知った。直前に視た像が網膜に物理的に「焼き付く」という発想が、独特で面白い。「視覚」を巡る議論にまで話を敷衍すると、えらく壮大なテーマとなってしまうから、あくまでも「眼の表層を巡る問題」と捉えたいところ。(ちなみに上記の引用部は、聖イグナティオスの遺体の心臓に「イエス・キリスト」の文字が刻まれていたという伝説に因んだ、エピソード的な部分で、「網膜上の残像」の問題がこの書で展開されているわけではない。)