散種 (叢書・ウニベルシタス)

散種 (叢書・ウニベルシタス)

「[…]色を意味するパルマコンという単語は、まさに魔法使いや医者の薬にも適用されるものではないか。呪術師たちは呪文を唱える際に小さな蝋人形に頼るのではないか*1」。呪い〔魅惑〕とはつねに、絵によるのであれ彫刻によるのであれ、なんらかの表象の効果であり、表象は他者の携帯を捕獲し捕縛する。[中略]したがってパルマコンという単語は、絵の色のことをも、すなわちzographèmeが書き込まれる素材[ルビ:マチエール]をも指すのだ。
(224ページ)

『国家』も画家の使う色彩をパルマカと呼んでいる〔420c〕。つまりエクリチュールと絵画の魔法は、死者を生身のように見せかけて偽る白粉[ルビ:おしろい]の魔法なのである。パルマコンは死を導入しかくまう。それは死体によい顔色[ルビ:フィギュール]を与え、死体に仮面を被せて化粧をする。
(227ページ)

*1:P. M. Schuhl, Platon et l'Art de son temps, p. 22.