悪しき夢想者

 ぼくの夢はまず第一に一杯のリキュール酒だ。一種の嘔吐の水だ。そこにぼくは潜りその水は血の色をした雲母を流す。ぼくの夢のいのちのなかでも、ぼくのいのちのそのいのちのなかでも、ぼくは何かのイマージュの深みにふれることがない。ぼくの夢という夢には出口がない、城砦がない、市街図がない。まったく黴くさいばらばらの手足だけだ。
 ぼくはその上、自分の考えていることがわかりすぎて、そこで起ることに興味がもてない。ぼくは一つのことしか求めない、それは自分を決定的に自分の思考のなかに閉じこめることだ。
 してぼくの夢の物理的な外見はどうかというなら、ぼくはそれをすでにあなたに告げた。すなわち一杯のリキュール酒だ。
(アントナン・アルトー、ジャック・リヴィエール『思考の腐触について 附・アルトー詩集』飯島耕一訳、思潮社、1975年、82-83ページ)