衣裳を語る言葉:制服の美学
- 作者: 久世光彦
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1992/08/01
- メディア: 文庫
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私は秩序というものは、漆黒または濃紺、あるいは純白の制服の内側に端然と在るものだと思っている。そういう外側から規制された秩序、不自然に禁欲的で、胸を圧迫されるように息苦しい秩序への憧憬は、反動などという浅薄な言葉では片付けられない。秩序というものは、正しさと同じくらい美しさに装われていなければならないのだ。だから秩序の象徴である制服は、美しければ美しいほど良い。それが過分に装飾的であればあるほど、その内側の情念もまた暗く輝いて美しいのである。
ルキノ・ヴィスコンティの映画を見る楽しみは、制服に溜息つく楽しみである。儀式に酔う楽しみである。
(久世光彦「侏儒と制服」『昭和幻燈館』晶文社、1987年、50ページ。)