衣裳を語る言葉:制服の美学

昭和幻燈館 (中公文庫)

昭和幻燈館 (中公文庫)

私は秩序というものは、漆黒または濃紺、あるいは純白の制服の内側に端然と在るものだと思っている。そういう外側から規制された秩序、不自然に禁欲的で、胸を圧迫されるように息苦しい秩序への憧憬は、反動などという浅薄な言葉では片付けられない。秩序というものは、正しさと同じくらい美しさに装われていなければならないのだ。だから秩序の象徴である制服は、美しければ美しいほど良い。それが過分に装飾的であればあるほど、その内側の情念もまた暗く輝いて美しいのである。
ルキノ・ヴィスコンティの映画を見る楽しみは、制服に溜息つく楽しみである。儀式に酔う楽しみである。
久世光彦「侏儒と制服」『昭和幻燈館』晶文社、1987年、50ページ。)