人造人間の系譜学

ゴーレムの生命論 (平凡社新書)

ゴーレムの生命論 (平凡社新書)

第一部 ゴーレムの伝説
 第一章 伝説の歴史的点描
 第二章 人間化するゴーレム


第二部 〈怪物〉と自動人形
 第一章 境界線上の〈怪物〉
 第二章 機械仕掛けの恋人


第三部 ゴーレムよ、土に帰れ
 第一章 未定形の肉塊
 第二章 亜人の命乞い

ゴーレムをそのユダヤ的な文脈から引き剥がし、人間によって人工的に作り出された「人間未満」の存在として規定することで、文化の中に散在する「ゴーレム的なもの」を論じた一冊。
目次を見れば分かる通り、90年代以降に隆盛したサイボーグ論や昨今のポスト・ヒューマン論に比べれば古典的・伝統的な題材が多い。ここでは、最先端の科学技術による人工生命とそれにまつわる倫理的問いという、ありがちなテーマよりもむしろ、ぎこちなく不器用で、無様な身体性の持ち主=「ゴーレム的なもの」に焦点が当てられているように思われる。この姿勢は、ゴーレムの「怪物(monster)」性と、人間に比したときの「劣等」性を論じた第二部に、特に顕著に現れているだろう。