strange eyes
瞳が黒目がちに見えるとして、日本でも数年前に流行したいわゆる「黒コン」(黒色のカラーコンタクトレンズ)、ファッション用としては最初期のものと思われる使用例を見つけた。いい加減しつこいようだけれど、像主はSteve Stange(右端は比較用に、裸眼と思われる写真、しかし美しい人がいたものですね)。インターネット上で調べた限りでは、「コンタクトレンズの歴史」に関してはWikipedia等に概略が載っていても、この手の着色コンタクトレンズの開発時期については言及が見つからない。ともかく、素人考えで憶測する限りでは、本来はアルビノのための外観補正用として作られた色付きコンタクトレンズが、当時既にあったのだろう。ちなみに、コンタクトレンズそのものが普及し始めるのは、酸素透過性の製品が出現した1970年代以降のことだという。(ただ、スティーヴが嵌めているものはコンタクトレンズにしては随分大きいので、もしかしたら部分型の義眼かもしれない。)
上掲の写真は彼のドアボーイ時代のものと思われるので、おそらく1979年前後ではないだろうか。特殊な個体のための医療用器具(=「異常」を矯正するための装置)を、あっけらかんとファッションに転用してしまうという発想が面白い。YMOをイギリスで最初に掛けたという「伝説」にせよ、シュルレアリスムやキュビスムの絵画のようなメイクアップにせよ、この頃のスティーヴは時代の先端、あるいは時代を超えたところにある存在だったはずだ。それがいつの間にか、当時一般的に流行っていたコスチューム(ソフトスーツやサルエルパンツ)に格下げになり、更にその四半世紀後には、過ぎ去った時代の栄光にいつまでもしがみつくカリカチュアに堕してしまうとは……(敢えてリンクは貼らないが、イギリスのテレビ局が2005年に制作したニューロマンティック・ムーヴメントについてのドキュメンタリー「Whatever happened to the Gender Benders ?」がYouTube上にアップロードされているので、ご興味のある方は検索して頂きたい。)
そんな個人的な感慨はともかく、「ファッション」として医療器具が流用されるとき、果たしてどのような心理やフェティシズムが働いているのか、そこに興味を引かれる。ちなみにスティーヴはCamden Palaceでのライブの際には、(本当に怪我していたわけでもないだろうに)両手に繃帯を巻いて歌っている。(参考動画1、2。)いわゆる「医療系ヴィジュアルバンド」の元祖だろうか?(日本の近年の「密室・地下・医療」系のバンドが標榜していると思しき「倒錯性」や「耽美性」は、もはやこの頃のストレンジからは消え失せてしまっているけれど。)
ファッションとしての「繃帯」については、こちらの記事でも。