建築のphysionomie

ルドゥーはショーの製塩工場において、「劇場的」な属性と三次元的構造を組合せることで、建築物に適切な「カラクテール」を付与し、権力と生産を表す精巧なアレゴリーを生み出した。エクスの監獄で試みられたのは、建築物への「顔貌(physiognomy)」あるいは人格の付与である。それは、エンブレム的な属性を付け加えることによってもたらされるのではない。建物全体を、そのカラクテールの記号へと変えてしまうものである。ビュフォンにおける動物やリンネにおける植物と同様に、建築物はその性質(nature)を、その「有機的組織体(organization)」、つまり形態の総体によって表す。個々の建築要素――基部を欠く、短くマッシヴなドーリア式柱、陰鬱な屋根の被せられた四隅の塔、「ゴシック式」の持ち送り積み――は、かつての「カラクテール」付与の試みを喚起させる。それらは抽象的で純粋な幾何学的量塊の中に統合されており、内部のオーダーを明確に表現しているが、しかしその組み合わせは、不機嫌で陰鬱な顔を示唆している。ルドゥーはもはや、ジャン・ド・ラ・ブリュイエールやシャルル・ル・ブランによる古典的な観相学的性格描写(characterisation)を、単純に援用することはしない。彼が着想源としたのは、顔貌から心理や行動を読み取ろうとする、より近年の疑似科学であった。スイスの司祭ヨハン・カスパール・ラファーターによって、1775年から78年にかけて考案されたこの「科学」は、『観相学における試み』で延べられている、次のような前提に基づく。すなわち、「外観、つまり事物の可視的な表層は、その内部、その属性を示唆する。あらゆる外観的徴表が、内部の性質の表出である」。そして「特徴的な(characteristic)線」、つまり顔の輪郭線と表面を丹念に分析することで、内部に存する魂の性質が見出されうるというのである。
(Anthony Vidler, Claude-Nicolas Ledoux: Architecture and Social Reform at the End of the Ancien Régime, Massachusetts: MIT Press, 1990, p. 206.)

ラファーターによる著作のpdfファイル
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k756902.r=caspar+lavater.langEN
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b2100128h.r=caspar+lavater.langEN
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k75691d.r=caspar+lavater.langEN

建築の分野でこのアナロジーに取り組んだのが、ル・カミュ・ド・メジエールである。彼は自然の「観相学的」な読解から導出される、性格付け(characterisation)の理論を発展させた。(ibid.)