カミーユ・クローデル展

サン・ベニーニュ教会付設の考古学博物館(かつての僧院)にて開催中のもの。
展示されている作品数は決して多くはなかったが、15歳から壮年まで、作風の変遷を辿れる構成となっていた。アルフレッド・ブシェール(彼女のアカデミー時代の師)やロダンの作品も、比較のためなのか数点展示されている。
15歳のときに作ったというビスマルクの頭部像にあった荒々しい情念が、美術アカデミーでの古典的教育の後に、一時的であれ去勢されてしまったこと、ロダンに影響を受けつつも、どこかそのエピゴーネンに留まったままであることなどが、如実に分かって面白い。
カミーユ・クローデルの作る人体の運動表現は、単体であれカップルの抱擁する様であれ、力が一方向に流れる流線型をなしているということに気付く。それに対してロダンの男女像は、それぞれ拮抗し合う力同士の均衡点で抱擁し合っているように見える。クローデルの作る人物には、ロダンほどのダイナミズムはなくて、むしろ運動中に凝固したかのようにスタティックである。それでも、衣装の襞や足元、あるいは頭部像の髭などは、泡立ちながら流れ落ちる瀑布のような形態で台座へと繋がっていて、その荒々しさに目が止まる。
むしろ秀逸だと思ったのは、実在の人物を象った作品群。目鼻だちの個性や、幼い少女の瑞々しさや壮年期の峻厳さといった個別の雰囲気が、繊細に巧みに表現されている。ロマン主義的な情熱や理想を体現するよりも、むしろ身近にある親密な世界を丁寧に写し取ることの方が、本来この女流芸術家には向いていたのかもしれない。
博物館の一室のみを使った展示で、あまり余計な情報がなかったせいか、もはや紋切り型となった「女流芸術家の悲劇」という物語にあまり惑わされず、彼女の作品を見ることができたように思う。