ABCdaire

かつての日記帳の跡地に、こんなものを作ってみた。
奨学金を貰っているロータリー財団の関連で、9月末にフランス語圏派遣奨学生の集いがあり、そこで3月までの「宿題」として課されたもの。日常的な事物の中にアルファベットの文字を見つけ出して、みんなでABCdaireを完成させようという試みだ。

絵画内の人物の身振りやコンポジション、あるいは付随的細部を構成する事物に文字を見出すという案は、個人的にはパテントを取りたい。というのはちょっとした冗談だけれど。

受胎告知の天使には、圧倒的にKの姿勢が多い(ニンファあるいは戦闘の身振り)。胸の前で組み合わされた、恭順を示す手の動きはX。向かい合って会話する二人の人物はH。十字架のキリストや略奪されるサヴィニーの娘の身体が形作る、アゴニーのY(あるいはT)。ディジョン美術館の収蔵品だけでも、ある種の定型のようなものが抽出できてしまう。

まだ集まっていない文字は、N、P、R、U、Z。Nは、直立する二人の人物と十字架降架後のキリスト身体で簡単に作れそうなものだけれど、意外と見つからない。Zも、構図的にはありふれていそうなのだが。

絵の中の「文字」を追ううちに、絵全体のイコノグラフィカルな意味の認識に先立って、その一部分の形態のみが、眼に突き刺さるごとくに立ち現れるようになる。今日は『受胎告知』の大天使のKばかりが眼に飛び込んでくる、不思議に予定調和めいた日だった。